「よし、着きましたよ!
荷物、下ろしますね!」
「ぼくも手伝います」
トワがそう言って、レオと一緒に荷台から荷物を下ろし始める。
私は湖の方へ視線を向けた。
森に囲まれ、朝日を受けて水面がきらきらと揺れている。
そこまで大きな湖ではないが、静かで心地いい場所だ。
「お嬢さんは、ゆっくりしててください!
今からセッティングしますから」
そう言いながら、レオは手際よく日傘や椅子を並べていく。
「じゃじゃーん。
どうぞ!」
促されて、私は椅子に腰を下ろした。
「ありがとう」
「よいしょっと」
レオが釣り竿を取り出し、餌を用意しているのを覗き込む。
……エビ?
「ねぇ。ずいぶん美味しそうなものを餌にするのね」
「そうですよ!
エンジェルドラゴンって、美食家らしいんです」
「舌が肥えてるみたいで、ミミズとか安い餌じゃダメなんですって」
だから――と、胸を張る。
「レオ特製、エビとイカのテリーヌです!」
「……美味しそう」
「味見してみます?」
「いいの?」
「どうぞどうぞ」
一口食べて、思わず目を見開く。
「……美味しい。
これ、本当に餌にするの?」
「もちろんです!」
「なんだか……お金のかかる魚なのね」
私は、曖昧に笑った。
餌を用意して、しばらくすると――
「レオっ! 引っ張ってるよ」
少し興奮した様子で、トワが声を上げる。
「おっ、来たか!」
「よいしょ――っと」
慣れた手つきで釣り竿を引き上げると、魚が跳ねた。
「これは……ただのマスだな。
お昼用にしよっと」
その後も、ちょこちょこと魚は釣れるが、
幻の魚――エンジェルドラゴンとやらは、まったく姿を見せない。
まあ、こんなものだろう。
そもそも、そんな簡単に現れたら「幻」なんて呼ばれない。
……それに。
静かな湖畔で、のんびりと過ごす休日も悪くない。

