第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない


(……浄化、成功)

(あとは……)

私はマルクとナナ嬢を見る。

水越しに、マルクと目が合った。

――通じた。

私が小さく頷くと、
マルクは迷わずナナ嬢を抱え、
力強く水を蹴って上へ向かう。

(……大丈夫)

その瞬間、視界が白く霞んだ。

(上、まで……)

意識が遠のきかける。
肺が限界を訴え、息が――

(……だめ、もう……)

そのとき。

柔らかな光の魔力が、
私たちを包み込んだ。

下から押し上げるように、
水の流れそのものが変わる。

(……ディラン)

迷いのない、静かな魔力。
焦りを押し殺した、冷静な判断。

剣のラピスラズリが、
最後に淡く瞬いた。

役目を終えたように。

――「よく、やった」

そんな声が、
水越しに、確かに聞こえた気がした。

そのまま、
私は光と水に抱かれながら戻ってきた。