横にいたディランはふっと笑う。
「よく言った、ティアナ」
ガイルの表情が、激しく歪んだ。
「黙れ……!」
「お前にわかるものかーーー!」
ガイルは指を鳴らした。
床の魔法陣が一斉に発光する。
「せいぜい苦しむがいい。
まずは実験の続きだ」
――警告音。
壁が割れ、魔女の雫で構成された魔導兵が這い出してくる。
ガイルの視線が、獲物を見るそれに変わるのがわかった。
私は小さく息を吸い、ドレスの裾を見下ろす。
淡い色のスカート。
ルイが仕立ててくれた、大切な一着。
けれど――今は。
腰元へ手を伸ばす。
スカートの内側。
縫い目に紛れるように取り付けられた、細い留め具。
カチリ。
小さな音とともに、裾の重みが消えた。
外れたスカートが、静かに床へ落ちる。
下から現れたのは、
動きやすい濃紺の細身のズボンと、ブーツ。
「……さすがだな」
思わず小さく笑ってしまう。
――ルイの顔が浮かんだ。
『戦う時に裾を踏んだら危ないでしょう?
だから“外せるだけ”にしておいたの。』
薔薇の刺繍が入っており、戦闘服なのに美しい。
ルイらしいな。
ディランが一瞬だけ目を細める。
「似合っている」
「今、褒めるところ?」
「今だからだ」
短くそう言って、彼は剣を抜いた。
「準備はいいか、ティアナ」
私は床に落ちたスカートを一度だけ見てから、前を向く。
「ええ」
剣に手を添え、魔力を整える。
「……行こう」
巨大装置が唸りを上げ、
紅血が、まるで生き物のように蠢いた。
ガイルが、愉快そうに笑う。
「その姿で立つということは――
覚悟はできたようだね、魔女の器」
ディランが一歩前に出る。
「彼女をそう呼ぶな」
剣先が、光を帯びた。
戦闘は、もう避けられなかった。



