細い通路を抜けた先で、空気が一変する。
――重い。
湿ったような、血の匂いを含む魔力。
やがて視界が開けた。
「……これは……」
巨大な円形空間。
天井まで届く魔導管が何本も張り巡らされ、
中央には禍々しい装置が鎮座していた。
無数の水晶槽。
中で脈打つ、濃紫の液体。
魔女の雫。
それらはすべて、中央の心臓部へと流れ込み――
赤黒く、粘ついた“別のもの”へと変換されていく。
「魔女の紅血……」
喉が、ひくりと鳴る。
「これが……ガイルの目的地か」
ディランが剣に手をかけた。
「ここまで辿り着くとは、さすがだよ」
拍手の音が、やけに大きく響いた。
奥の通路から、ゆっくりと現れた男。
白衣の上から深紅の外套を羽織り、
眼鏡の奥の瞳だけが、異様な熱を帯びている。
「ガイル……!」
ディランが一歩前に出る。
「王子殿下に、共鳴の令嬢。
わざわざ揃って来てくれるとは光栄だ」
愉しげに笑う。
「……これが、あなたの望んだもの?」
私が問いかけると、
ガイルは肩をすくめた。
「“王になる力”だよ」
淡々と、狂気を隠しもせず言い放つ。
誰かの気配が、ゆっくりと立ち上がる。
「あなたに、聞きたいことがあります」
その声に、ディランが一瞬だけこちらを見るが、止めなかった。
ガイルは興味深そうに眉を上げる。
「ほう?」
「母――アイリスは、あなたの研究に関わっていましたね」
空気が、ぴんと張り詰める。
ガイルの笑みが、わずかに止まり、
次いで――ゆっくりと歪んだ。
「……なるほど」
低く、感嘆の混じった声。
「そうか。君が――あの女の娘か」
その言い方に、胸が疼く。
「母の死は事故ではなかった。
研究の危険性に気づき、止めようとしていた」
「そして――」
一瞬、言葉を飲み込む。
「私が“器”である可能性があることも、知っています」
――重い。
湿ったような、血の匂いを含む魔力。
やがて視界が開けた。
「……これは……」
巨大な円形空間。
天井まで届く魔導管が何本も張り巡らされ、
中央には禍々しい装置が鎮座していた。
無数の水晶槽。
中で脈打つ、濃紫の液体。
魔女の雫。
それらはすべて、中央の心臓部へと流れ込み――
赤黒く、粘ついた“別のもの”へと変換されていく。
「魔女の紅血……」
喉が、ひくりと鳴る。
「これが……ガイルの目的地か」
ディランが剣に手をかけた。
「ここまで辿り着くとは、さすがだよ」
拍手の音が、やけに大きく響いた。
奥の通路から、ゆっくりと現れた男。
白衣の上から深紅の外套を羽織り、
眼鏡の奥の瞳だけが、異様な熱を帯びている。
「ガイル……!」
ディランが一歩前に出る。
「王子殿下に、共鳴の令嬢。
わざわざ揃って来てくれるとは光栄だ」
愉しげに笑う。
「……これが、あなたの望んだもの?」
私が問いかけると、
ガイルは肩をすくめた。
「“王になる力”だよ」
淡々と、狂気を隠しもせず言い放つ。
誰かの気配が、ゆっくりと立ち上がる。
「あなたに、聞きたいことがあります」
その声に、ディランが一瞬だけこちらを見るが、止めなかった。
ガイルは興味深そうに眉を上げる。
「ほう?」
「母――アイリスは、あなたの研究に関わっていましたね」
空気が、ぴんと張り詰める。
ガイルの笑みが、わずかに止まり、
次いで――ゆっくりと歪んだ。
「……なるほど」
低く、感嘆の混じった声。
「そうか。君が――あの女の娘か」
その言い方に、胸が疼く。
「母の死は事故ではなかった。
研究の危険性に気づき、止めようとしていた」
「そして――」
一瞬、言葉を飲み込む。
「私が“器”である可能性があることも、知っています」

