その背後から、アリスが一歩、静かに近づいた。
ルイの腕が離れたのを見計らうように、
控えめに――けれど確かな温度で。
「……お嬢様」
名前を呼んでから、
彼女はぎゅっと、静かに抱きしめてくる。
包み込むようなルイの抱擁とは違い、
少し震えを含んだ、必死に感情を抑えた力。
「……本当に、よかったです」
額を肩に預け、声を落とす。
指先が、私の背中の布をきゅっと掴んだ。
「お嬢様は、いつも無理をなさいますから……
気づかないうちに、遠くへ行ってしまうのではと……」
一瞬、言葉に詰まり。
「……怖かったです」
その声は、
いつもの完璧で冷静な侍女のものではなかった。
「ごめんね。心配かけて」
私はそっと、アリスの背中を叩く。
「……でも、こうして触れられて、本当に安心しました。」
顔を上げると、いつもの穏やかな微笑み。
けれどその瞳の奥には、まだ拭いきれない想いが残っていた。
「ふふ。アリス、ずいぶん素直だね」
「……今だけです」
「今だけ、か」
私がくすりと笑いながらいうと、ルイが腕を広げる。
「じゃあ、今だけ特別よ。
本当にヒヤヒヤさせるんだから」
2人まとめて、やさしく包み込むように抱き寄せた。
「……私、そんなに危なっかしい?」
抱きしめられたまま、ぽつりと零す。
自分では精一杯考えて、選んで、動いてきたつもりだった。
けれど、こうして皆の顔を見ると――少しだけ不安になる。
その問いに、間を置かず。
「ええ、世界一」
ルイが即答した。
あまりに迷いのない声に、思わず瞬きをする。
「そんな即答なの……?」
「ええ。即答よ」
肩に回した腕を少し強め、くすりと笑う。
「自分の身より他人を優先して、
傷ついても笑って、平気なふりをするでしょう?」
「それを危なっかしいと言わずに、何と言うの」
「……う」
言い返せず、視線を逸らすと、
「ほら」
と、アリスが小さく息をついた。
「ですから、皆が目を離せなくなるのです」
「お嬢様は、無自覚すぎます」
「そんなに……?」
「はい」
きっぱり。
「ご自身の価値を、まったく理解なさっていません」
ルイの腕が離れたのを見計らうように、
控えめに――けれど確かな温度で。
「……お嬢様」
名前を呼んでから、
彼女はぎゅっと、静かに抱きしめてくる。
包み込むようなルイの抱擁とは違い、
少し震えを含んだ、必死に感情を抑えた力。
「……本当に、よかったです」
額を肩に預け、声を落とす。
指先が、私の背中の布をきゅっと掴んだ。
「お嬢様は、いつも無理をなさいますから……
気づかないうちに、遠くへ行ってしまうのではと……」
一瞬、言葉に詰まり。
「……怖かったです」
その声は、
いつもの完璧で冷静な侍女のものではなかった。
「ごめんね。心配かけて」
私はそっと、アリスの背中を叩く。
「……でも、こうして触れられて、本当に安心しました。」
顔を上げると、いつもの穏やかな微笑み。
けれどその瞳の奥には、まだ拭いきれない想いが残っていた。
「ふふ。アリス、ずいぶん素直だね」
「……今だけです」
「今だけ、か」
私がくすりと笑いながらいうと、ルイが腕を広げる。
「じゃあ、今だけ特別よ。
本当にヒヤヒヤさせるんだから」
2人まとめて、やさしく包み込むように抱き寄せた。
「……私、そんなに危なっかしい?」
抱きしめられたまま、ぽつりと零す。
自分では精一杯考えて、選んで、動いてきたつもりだった。
けれど、こうして皆の顔を見ると――少しだけ不安になる。
その問いに、間を置かず。
「ええ、世界一」
ルイが即答した。
あまりに迷いのない声に、思わず瞬きをする。
「そんな即答なの……?」
「ええ。即答よ」
肩に回した腕を少し強め、くすりと笑う。
「自分の身より他人を優先して、
傷ついても笑って、平気なふりをするでしょう?」
「それを危なっかしいと言わずに、何と言うの」
「……う」
言い返せず、視線を逸らすと、
「ほら」
と、アリスが小さく息をついた。
「ですから、皆が目を離せなくなるのです」
「お嬢様は、無自覚すぎます」
「そんなに……?」
「はい」
きっぱり。
「ご自身の価値を、まったく理解なさっていません」

