ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 金曜日の午後。
 昼のピークを過ぎ、少しだけ人口密度の下がった大学のカフェテリアに、正人から呼び出された。

 丸テーブルに、正人を筆頭としたいつものクラスの男子数名が、ニヤニヤとだらしない笑みを浮かべながら待っていた。

「一日早いけど、誕生日おめでと〜う! 祥ちゃ〜ん!」

 鼓膜を揺らすような馬鹿でかい声とともに、ドンッ、とテーブルの中央に紙袋が置かれた。

 何事かとこちらを振り返る周囲に、僕は軽く頭を下げた。

「……おい、『祥ちゃん』はやめろ。……でも、サンキュ」

 美絵が僕を呼ぶ時の特別な響きを、こいつらのむさ苦しい声で再生されるのはなんだか無性に腹が立つが、お礼はしっかりと伝えておく。

 苦笑いしながら紙袋の中を覗き込むと、スニーカーが入っているような長方形の箱が見えた。

「何これ? 靴?」

 僕が手を伸ばしかけると、正人がバシッと僕の手の甲を叩いて遮った。

「あっ、こら! 開けてからのお楽しみ〜。開ける時は、家で一人で開けてね!」

 正人がパチンと大げさにウインクをする。
 他の男子たちも、肩を揺らして含み笑いをしている。

「……なんだ?」

 胡散臭そうに目を細めたものの、彼らの顔には悪戯っ子のような親愛の情しか浮かんでいない。

 僕は小さくため息をつき、「とりあえず、ありがとな」と紙袋を持ち帰った。