「ちょっと、調べてみよ」
私は鞄からスマホを取り出し、机の下でこっそりと検索画面を開いた。
『大学生 カップル 進捗 期間』
いくつかの恋愛コラムやアンケート記事をスクロールしていく。画面の青白い光が、私たちの真剣な顔を照らす。
「ええと……『大学生カップルが最後のステップまで進むのは、付き合ってから二〜三か月が多い』……」
「ほらー! やっぱり早いよ、うちの彼氏!」
いずみが声を潜めながらも、頭を抱えて机に突っ伏した。
「どうしよう、自分の不安な気持ち、ちゃんと伝えたほうがいいのかなー。でも、嫌われたらどうしよう……うーん……」
唸り声を上げるいずみの背中を、今度は私が優しくさする番だった。
しばらく机に突っ伏していたいずみは、ふと顔を上げ、少し遠慮がちな上目遣いで私を見た。
「……美絵と祥太郎くんは……まだ?」
「えっ!?」
予想外の矢印の向きに、私の声が裏返る。
「ま、まだだよ! 私たちなんて、この前ようやく……えっと……だから、うん」
しどろもどろになる私を見て、いずみは何かを計算するように虚空を見つめた。
「もうすぐ付き合って二か月とかだよね。一般的なデータに当てはめると……じゃあ、そろそろなのかな?」
「そ、そうなの……?!」
「あ、そういえば!」
いずみが急にポンッと手を叩いた。
「こないだ、サークルの部室でまさとんが騒いでなかった? 『もうすぐ祥太郎の誕生日だ』って」
「うん……プレゼント、もう買ったよ」
私が恥ずかしそうに頷くと、いずみの顔がパァッと明るく輝いた。
「キャーッ! 絶対、そういう特別なイベントの時に何か起こるじゃん!」
パシパシッ! と、いずみの遠慮のない手が私の背中を叩く。
「ちょっといずみ……声大きいから……!」
周囲の学生たちの視線をごまかすように縮こまりながら、私は急に早鐘を打ち始めた自分の心臓の音を聞いていた。
祥ちゃんの誕生日。
二人きりで過ごす、特別な日。
正直なところ、私にとっての祥ちゃんは「究極の安全地帯」だ。
彼といて、怖い思いをするとか、そんな不安は一切ない。
彼はいつだって私を最優先に考え、大切に扱ってくれる。
でも。
いずみとの会話でリアルな『その先』を意識してしまった途端、私の内側に、これまで経験したことのない新しい種類の緊張感がふわりと舞い降りていた。
安全地帯にいるはずなのに、足元が少しフワフワと浮き上がるような、甘くて怖いような感覚。
「あ、やっと来た」
いずみの声に顔を上げると、前方のドアから、分厚い資料を抱えた教授が申し訳なさそうに笑いながら入ってくるところだった。
教室のざわめきが、潮が引くようにスッと静まる。
私はノートにペンを走らせる準備をしながら、窓の外で揺れる枯れ葉を見つめ、彼に渡すプレゼントの箱を思い浮かべて、密かに深く息を吸い込んだ。
私は鞄からスマホを取り出し、机の下でこっそりと検索画面を開いた。
『大学生 カップル 進捗 期間』
いくつかの恋愛コラムやアンケート記事をスクロールしていく。画面の青白い光が、私たちの真剣な顔を照らす。
「ええと……『大学生カップルが最後のステップまで進むのは、付き合ってから二〜三か月が多い』……」
「ほらー! やっぱり早いよ、うちの彼氏!」
いずみが声を潜めながらも、頭を抱えて机に突っ伏した。
「どうしよう、自分の不安な気持ち、ちゃんと伝えたほうがいいのかなー。でも、嫌われたらどうしよう……うーん……」
唸り声を上げるいずみの背中を、今度は私が優しくさする番だった。
しばらく机に突っ伏していたいずみは、ふと顔を上げ、少し遠慮がちな上目遣いで私を見た。
「……美絵と祥太郎くんは……まだ?」
「えっ!?」
予想外の矢印の向きに、私の声が裏返る。
「ま、まだだよ! 私たちなんて、この前ようやく……えっと……だから、うん」
しどろもどろになる私を見て、いずみは何かを計算するように虚空を見つめた。
「もうすぐ付き合って二か月とかだよね。一般的なデータに当てはめると……じゃあ、そろそろなのかな?」
「そ、そうなの……?!」
「あ、そういえば!」
いずみが急にポンッと手を叩いた。
「こないだ、サークルの部室でまさとんが騒いでなかった? 『もうすぐ祥太郎の誕生日だ』って」
「うん……プレゼント、もう買ったよ」
私が恥ずかしそうに頷くと、いずみの顔がパァッと明るく輝いた。
「キャーッ! 絶対、そういう特別なイベントの時に何か起こるじゃん!」
パシパシッ! と、いずみの遠慮のない手が私の背中を叩く。
「ちょっといずみ……声大きいから……!」
周囲の学生たちの視線をごまかすように縮こまりながら、私は急に早鐘を打ち始めた自分の心臓の音を聞いていた。
祥ちゃんの誕生日。
二人きりで過ごす、特別な日。
正直なところ、私にとっての祥ちゃんは「究極の安全地帯」だ。
彼といて、怖い思いをするとか、そんな不安は一切ない。
彼はいつだって私を最優先に考え、大切に扱ってくれる。
でも。
いずみとの会話でリアルな『その先』を意識してしまった途端、私の内側に、これまで経験したことのない新しい種類の緊張感がふわりと舞い降りていた。
安全地帯にいるはずなのに、足元が少しフワフワと浮き上がるような、甘くて怖いような感覚。
「あ、やっと来た」
いずみの声に顔を上げると、前方のドアから、分厚い資料を抱えた教授が申し訳なさそうに笑いながら入ってくるところだった。
教室のざわめきが、潮が引くようにスッと静まる。
私はノートにペンを走らせる準備をしながら、窓の外で揺れる枯れ葉を見つめ、彼に渡すプレゼントの箱を思い浮かべて、密かに深く息を吸い込んだ。


