ふたつの弧が重なるとき ~交わらなかったふたりの、遅すぎる初恋がはじまるまで~

私が打ち込んでいた走り高跳びもまた、常に自分との戦いを強いられる孤独な競技だ。
助走位置に立ち、遥か高くに設定されたバーを見上げる瞬間。
周囲の歓声も風の音も消え去り、世界には自分とバーだけになる。
失敗すれば、その責任はすべて自分一人にのしかかってくる。
言いようのないプレッシャーと不安に押しつぶされそうになる時、私はいつも、隣のグラウンドにあるマウンドに視線を向けていた。
夏の乾いた風が砂埃を巻き上げる中、常に期待という重圧を背負い、逃げ場のない場所で腕を振り続ける彼。
ミットにボールが収まるパーン、という小気味良い音が遠くまで響く。
その凛とした立ち姿を思い出すだけで、不思議と足が前に出た。踏み切るための勇気が、足の裏から湧き上がってきた。
中学最後の、夏の大会。
私の腰は、蓄積された疲労とヘルニアで悲鳴を上げていた。
息をするだけでも鈍い痛みが走り、医師には止められ、両親にも強く反対されていた。
私自身も、悔しくも出場を諦める方向で考えていた。
そんな時に聞いた、彼の怪我の一報ーー。
私は、舌の奥に苦味が残る強い痛み止めを飲み込んで、出場を決めた。
それは、肩を壊してもうマウンドに立てなくなった彼のためだなんて言ったら、あまりにも図々しい。
私が飛んだところで、彼の無念を晴らせるわけなんてない。
ただの自己満足だっていうのも、十分承知している。
ただ、志半ばで白球を手放さざるを得なかった彼の分まで、私は自分の足で最後まで飛び切りたかった。
途中で諦めることだけは、したくなかった。
それは、彼から勇気をもらい続けた私なりの、ちっぽけで、よくわからない意地だったのかもしれない。

痛みで思うように力を使うことができず、大会の結果は、3年間目指していたものには到底及ばないものだった。
けれど、不思議と心は初夏の青空とリンクするように晴れ晴れとしていて。