ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用な二人が、東京で0センチメートルになるまで~

 太陽が真上からジリジリと肌を焼いている。
 砂浜からの照り返しが目に痛い。

 僕たち男子陣は、民宿の前のビーチで、パラソルを立てて場所取りをしていた。
「お、来た来た! 女子チーム!」
 正人が声を張り上げ、立ち上がる。

 視線の先、民宿から続く小道を、浮き輪やタオルを持った女子たちが歩いてくるのが見えた。
 カラフルな水着、眩しい肌。
 男子連中が「おおっ」と色めき立つのがわかる。

 僕は、無意識に喉を鳴らし、視線だけで彼女を探した。

 ――いた。
 いずみの後ろ、少し俯き加減で歩いてくる森さん。

 その姿を捉えた瞬間、僕は大きく安堵の息を吐き出した。
 彼女は、白い長袖のパーカーのようなものを羽織っていたからだ。
 前は閉めていて、下の水着はほとんど見えない。

「……よかった」
 思わず呟いた声は、波の音にかき消された。

 もし、彼女が際どい水着姿で現れていたら、僕は目のやり場に困るどころか、周りの男たちの視線から彼女を隠したくて、不審な動きをしてしまっていたかもしれない。

 ……『見たい』という男としての本能がゼロだったとは言わない。
 けれどそれ以上に、『他の奴に見せたくない』という独占欲にも似た焦燥感が、僕の中で渦巻いていたのだ。

「おーい、ここここ!」
 正人が手を振る。
 近づいてくる森さんと目が合う。
 彼女は僕の顔を見ると、少し照れくさそうにパーカーの袖口をぎゅっと握り、小さく会釈をした。

「……暑いね」
 僕が声をかけると、彼女はホッとしたように笑った。
「うん、すごい日差しだね。……瀬川くん、ちょっと焼けた?」
「ああ、ちょっとだけ」
 中学時代、真っ黒に日焼けしていた僕を知っているであろう彼女にそう言われると、なんだか少しこそばゆい。

 潮風が、彼女の栗色の髪を揺らす。
 パーカー越しでもわかる華奢な肩のライン。

 水着は見えなくても、その白さと、夏の光の中に立つ彼女の存在感だけで、僕の心拍数は上がりっぱなしだった。