ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用な二人が、東京で0センチメートルになるまで~

 七月の終わり。

 大学の前期試験という名の高い壁をようやく乗り越えた私たちは、その足で、待望の「夏」へ飛び出した。

 ショッピングモールの自動ドアが開いた瞬間、強烈な冷気が肌を包み込む。
 外の殺人的な日差しとアスファルトの照り返しから逃れてきた私たちにとって、そこは天国だった。
 吹き抜けの天井からは、陽光が柔らかく降り注ぎ、色とりどりのサマーセールのポスターが踊っている。
 甘いクレープの匂い、コーヒーの香り、そして新しい洋服の布地の匂い。

「っはー! 生き返る! やっとテスト終わったねー!」
 隣を歩くいずみが、解放感いっぱいに両手を伸ばした。
「ほんとだね。……あ、見ていずみ、あそこのワンピース可愛い」
「おっ、本当だ! 行こう行こう!」

 私たちは、来週に迫ったサークルの夏合宿に向けた買い出しに来ていた。
 二泊三日の、海辺の合宿。
 昼はバーベキューに海水浴、夜は花火。
 何かのスポーツもするらしい。
「絵に描いたような『大学生の夏休み』をするぞ!」と、幹事の先輩たちが意気込んでいた。

 キャリーケースに入れる服や、日焼け止め。
 そして何より重要なのは、水着。
 私の手持ちの水着は、小、中学時代のスクール水着か、高校生の時に家族旅行で着た少し子供っぽい花柄のものしかない。

「うーん、美絵は色が白いから、これとか似合いそう!」
 いずみが手に取ったのは、淡いミントグリーンのオフショルダーの水着だった。
「えっ、ちょっと露出多くない……?」
「合宿だよ? 海だよ? このくらい攻めなきゃ! それに……」

 いずみはニヤリと笑って、私の耳元で囁いた。
「見せたい人もいるでしょ?」

「っ!?」
 心臓が跳ね上がった。
「なっ、なに言ってるの!?」
 顔もカッと熱くなるのがわかる。

「ふふん、動揺しすぎ。……ま、とりあえず試着してみなって!」
 いずみに背中を押され、私は更衣室へと押し込まれた。