ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用な二人が、東京で0センチメートルになるまで~

 微熱の残る頭で、スマホの画面を見つめていた。

『湯冷めしないようにすぐ髪乾かしてね』

 彼女からの返信に、口元が緩むのを止められない。

 実は、風呂に入っていいかどうかくらい、自分でもわかっていた。
 わからなかったとしても、ネットで調べればいいだけだ。

 ただ、彼女との会話の時間を終わらせたくなかった。

「お大事に」「ありがとう」で終わってしまうのが寂しくて。
 いつもだったら、遠慮してしまったかもしれないけど……今日くらいならいいかなと、つい、どうでもいい質問を投げてしまった。

 彼女は丁寧に答えてくれた。
 僕のくだらない甘えを、受け止めてくれた。

「……風呂、入るか」
 重い腰を上げ、ふらつく足取りで浴室へ向かう。

 汗で張り付いたTシャツを脱ぎ捨てながら、鏡に映った自分を見る。
 力ない顔をしている。
 目だけは少しだけ、熱とは違う理由で潤んでいる気がした。

 シャワーのノブをひねると、温かいお湯が頭上から降り注ぐ。
 身体の熱と、胸の奥のくすぐったい感情が、排水溝へと流れていった。