ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用な二人が、東京で0センチメートルになるまで~

 注文した料理を運んできてくれたのは、瀬川くんではなく、別の店員さんだった。

 壁に掛かっている時計を見ると、午後四時半を指している。

 正人くんは、この後にあるバイト前の腹ごしらえと言って、ハンバーグや唐揚げが山盛りのがっつりメニューを、すごいスピードで次々と口に入れていく。
 いずみは苺のパンケーキ、私はガトーショコラを注文した。
 ファミレスには久しぶりに来たけれど、以前よりデザートメニューが充実していて、どれにするかすごく迷ってしまった。

 ライスを頬張りながら、遠くのテーブルをじっと見ていた正人くんが気づく。
 「あれ? あそこ、俺らと同じクラスの子たちだわ」

 正人くんの視線の先には、食事を終えた三人の女の子たちが、楽しそうに盛り上がっていた。

 ちょうど近くを通りかかった瀬川くんが、空いている食器を下げようとすると、女の子たちが親しげに彼へ声をかける。

 「……まさか、祥太郎目当て? あいつ、この俺を差し置いてモテてんのか?」
 正人くんが、コーラの入ったストローを回しながら茶化すように言った。

 あの子たち、瀬川くんのこと気に入ってるんだ。
 (楽しそう……)
 瀬川くんも、まんざらでもなさそうに見えてしまう。

 まただ。
 野球観戦の時の、彼が真希さんと話していた時と同じ感覚。
 胸の奥がざらつく。
 透明な壁ができて、瀬川くんが遠くに行ってしまうような、足元に風が吹くような感覚。

 (やだな、私……)

 口元から笑みが消えていくのがわかる。
 グラスの水滴が指先を濡らし、その冷たさが心臓まで伝わってくるようだった。

 隣のいずみが、そんな私をじっと見ていることには、気がつかなかった。