「――……まあ、森さんは男子にとっては芸能人みたいなものだったわ。リアルな恋愛対象っていうよりは」
僕はコーヒーの残りを飲み干し、過去の映像を振り払うように立ち上がった。
「悪い、今日はもう帰るわ。バイトあるし」
「えー、もうちょい聞かせろよ祥太郎ー!」
正人の声を背中で受け止めながら、僕は逃げるように部室を後にした。
◇
「……ふう」
駅の改札を抜けながら、僕は大きく息を吐いた。
飲み会で無遠慮に森さんを質問攻めしたサークルの先輩いわく、現在は彼氏はいないらしい。
ということは、あの「年上彼氏」と続いているということもない。
ただ……彼女に彼氏がいようと、僕がただの中学の同級生であろうと、そんなことはどうでもいい。
大学生になった今、彼女が同じ環境にいて、笑いかけてくれるなんて――それだけで夢物語のような状況なんだ。
そう自分に言い聞かせる。
けれど、カフェテリアで見た彼女の無防備な笑顔、筆箱をぶちまけた時の困った顔、コロコロ変わる表情のすべてが、どうしようもなく愛おしく思い出されてしまう。
遠い記憶の中、その綺麗な箱の中に押し込めたはずの感情。
それが、少しずつ形を変えて、僕の胸を騒がせ始めていることに、僕はまだ気づかないふりをしていた。
僕はコーヒーの残りを飲み干し、過去の映像を振り払うように立ち上がった。
「悪い、今日はもう帰るわ。バイトあるし」
「えー、もうちょい聞かせろよ祥太郎ー!」
正人の声を背中で受け止めながら、僕は逃げるように部室を後にした。
◇
「……ふう」
駅の改札を抜けながら、僕は大きく息を吐いた。
飲み会で無遠慮に森さんを質問攻めしたサークルの先輩いわく、現在は彼氏はいないらしい。
ということは、あの「年上彼氏」と続いているということもない。
ただ……彼女に彼氏がいようと、僕がただの中学の同級生であろうと、そんなことはどうでもいい。
大学生になった今、彼女が同じ環境にいて、笑いかけてくれるなんて――それだけで夢物語のような状況なんだ。
そう自分に言い聞かせる。
けれど、カフェテリアで見た彼女の無防備な笑顔、筆箱をぶちまけた時の困った顔、コロコロ変わる表情のすべてが、どうしようもなく愛おしく思い出されてしまう。
遠い記憶の中、その綺麗な箱の中に押し込めたはずの感情。
それが、少しずつ形を変えて、僕の胸を騒がせ始めていることに、僕はまだ気づかないふりをしていた。



