ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 ◇

 それから五時間近く。
 私たちは過去の恋バナや、いずみの彼氏との悩み、正人くんがなかなか恋ができないことなど、色々な話で大いに盛り上がった。

「もう十時かー」
 スマホの画面を見た正人くんの言葉に、いずみが目を丸くして驚く。
「え!? 時間経つのはやすぎ!」
「そういえば、今日の記念写真撮ろうぜ!」

 正人くんの提案で、自撮りモードで三人の写真を撮る。

 その後、正人くんは画面を見ながらニヤニヤとスマホを操作し始めた。
「まさとん、ニヤニヤしながら何してんのー?」
 いずみが覗き込むと、「えー? 面白いこと!」と正人くんは悪戯っぽく歯を見せて笑った。


 ――ブブッ。

 その十五分後、テーブルに置かれた正人くんのスマホが震える。
 画面を見た彼が「よし! そろそろ出るか!」と立ち上がった。

 お会計を済ませて、店が入っているビルの下に出た。
 春が近づいているとはいえ、夜の風はまだ冷たく、冬の香りがする。

 キョロキョロと辺りを見回していた正人くんが、「おー!」と声を上げた。

 その視線の先を見て、私といずみは目を丸くした。

「……祥ちゃん!?」

 そこには、部屋着らしきグレーのスウェットの上に、急いでダウンジャケットだけを羽織った、手ぶら姿の祥ちゃんが立っていた。
 少し息を切らしている。

「……お前なあ」
 祥ちゃんは呆れたような顔で正人くんを見た後、ポケットから取り出した自分のスマホの画面を私といずみに見せた。

 そこには、さっき撮った三人の記念写真と、お店の住所、そして――。

『迎えにきて♡』

 その一言だけ書かれた、正人くんからのメッセージが表示されていた。

「なにこれー!」
 私といずみが笑うと、正人くんはなぜか誇らしげな顔をした。

「じゃ、そういうことで! 祥太郎、ヨッシーは任せた! 今日めちゃくちゃ楽しかったなー! またやろうぜー!」
「それじゃあ、美絵、祥太郎くん、おやすみー!」

 正人といずみはそう言いながら、嵐のように去っていってしまった。

「あっ……バイバーイ!」
 遠ざかる二人に向かって手を振る。
 祥ちゃんも「まったく……」と呆れ笑いを浮かべながら、小さく手を上げていた。