脳裏に蘇るのは、中学二年の冬の光景。
部活帰りの夕暮れ時。
数日降り続いた雪がアスファルトを覆い、吐く息が白く凍るような寒い日だった。
友達と別れ、商店街のアーケードを抜けた先、駅前のイルミネーションが煌めく雑踏の中で、僕は見てしまったのだ。
手を繋いで歩く、男女の姿を。
(――……彼女だ)
制服の上にベージュのダッフルコートを羽織り、柔らかそうな白いマフラーを巻いて歩いていた彼女は、森美絵だった。
その隣には、背の高い男がいた。
制服のズボンからして、市内の進学校に通う高校生だろうか。
彼女は緊張しているような強張った顔をマフラーに埋め、けれど拒むことなく、彼と手を繋いでいた。
周囲の雑音が消え、残酷なほどしっくりくる二人の姿が、スローモーションのように視界に焼き付く。
凍った雪の放つ冷気が、わずかに開いた口元から入り込んで、僕の全身を芯まで冷やした。
――噂は、残念ながら、本当だった。
『森さんって、年上の彼氏がいるらしいぜ』
『マジかー。それじゃあやっぱり俺らじゃ相手にならねーな』
彼女にはいくつか真偽不明の噂が教室で囁かれていたが、一番真実であってほしくなかったものが、真実として、ずしりと僕の胸にのしかかった瞬間だった。
彼女には、僕たちの知らない世界がある。
大人っぽい彼女に、年上の彼氏。
悲しくも、腑に落ちてしまう感覚もあった。
僕が泥だらけのユニフォーム姿でグラウンドに入り浸る間に、彼女は少し大人の階段を上っている。
その事実は、中学生だった僕に、埋めようのない距離を突きつけた。
部活帰りの夕暮れ時。
数日降り続いた雪がアスファルトを覆い、吐く息が白く凍るような寒い日だった。
友達と別れ、商店街のアーケードを抜けた先、駅前のイルミネーションが煌めく雑踏の中で、僕は見てしまったのだ。
手を繋いで歩く、男女の姿を。
(――……彼女だ)
制服の上にベージュのダッフルコートを羽織り、柔らかそうな白いマフラーを巻いて歩いていた彼女は、森美絵だった。
その隣には、背の高い男がいた。
制服のズボンからして、市内の進学校に通う高校生だろうか。
彼女は緊張しているような強張った顔をマフラーに埋め、けれど拒むことなく、彼と手を繋いでいた。
周囲の雑音が消え、残酷なほどしっくりくる二人の姿が、スローモーションのように視界に焼き付く。
凍った雪の放つ冷気が、わずかに開いた口元から入り込んで、僕の全身を芯まで冷やした。
――噂は、残念ながら、本当だった。
『森さんって、年上の彼氏がいるらしいぜ』
『マジかー。それじゃあやっぱり俺らじゃ相手にならねーな』
彼女にはいくつか真偽不明の噂が教室で囁かれていたが、一番真実であってほしくなかったものが、真実として、ずしりと僕の胸にのしかかった瞬間だった。
彼女には、僕たちの知らない世界がある。
大人っぽい彼女に、年上の彼氏。
悲しくも、腑に落ちてしまう感覚もあった。
僕が泥だらけのユニフォーム姿でグラウンドに入り浸る間に、彼女は少し大人の階段を上っている。
その事実は、中学生だった僕に、埋めようのない距離を突きつけた。


