ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用な二人が、東京で0センチメートルになるまで~

「……ふう」
駅の改札を抜けながら、僕は大きく息を吐いた。

飲み会で無遠慮に森さんを質問攻めしたサークルの先輩いわく、現在は彼氏はいないらしい。
ということは、あの『年上彼氏』と続いているということもない。
ただ……彼女に彼氏がいようと、僕がただの中学の同級生であろうと、そんなことはどうでもいい。
大学生になった今、彼女が同じ環境にいて、笑いかけてくれるなんて――それだけで夢物語のような状況なんだ。
そう自分に言い聞かせる。

けれど、カフェテリアで見た彼女の無防備な笑顔、筆箱をぶちまけた時の困った顔、コロコロ変わる表情のすべてが、どうしようもなく愛おしく思い出されてしまう。

遠い記憶の中、その綺麗な箱の中に押し込めたはずの感情が、少しずつ形を変えて、僕の胸を騒がせ始めていることに、僕はまだ気づかないふりをしていた。