ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 その時。
 突然、ガチャ、と乱暴に部室のドアが開いた。

「おー! お疲れー! 二人ともテスト終わったー?」
 入ってきたのは、見慣れた大きなリュックを背負った正人くんだった。

「終わったよー! まさとんも?」
「おうよー! 二年以降にヘマして単位落としてもいいように、今年めっちゃ多めに取ったからマジで疲れたわー!」

 ドサッ、と大袈裟な音を立ててソファに座り込む正人くん。
 そして、私の方を見てパチリと瞬きをした。

「あれ? ヨッシー髪切った?」
「うん。さっき切ってきたの」
「おー、似合ってんじゃん!」

 正人くんはそう褒めてくれた後、「……あ、そういや」と、何かを思い出したようにポンと手を打った。

「祥太郎は明後日が最後のテストだってな。俺は取ってない授業のやつだけど。あいつ、テスト終わってもコーチのバイトで忙しいらしいけど……ヨッシーを不満にさせたりしてないかー?」

 明るく茶化すような問いかけに、私は不意を突かれた。

(忙しいことで不安を感じてるわけじゃないんだけどね……)
 心の中でそっと呟きながら、「あっ、うん! 大丈夫だよ」と笑顔を作って返す。

 けれど、正人くんは私の少しだけ強張った表情から何かを感じ取ったらしい。
「んんっ?」と目を細めたかと思うと、数秒間何かを考え込んだ後、パンッ!と勢いよく立ち上がった。

「よし! 二人とも、今日この後予定あるか?」
「二人でご飯行こうかって軽く話してたけど」
 いずみが答える。
「じゃあ、今から三人で飲みに行こうぜ!」
 正人くんは親指でクイッと出口のドアを指した。

「えっ、今から!?」
 驚いて時計を見ると、まだ夕方の四時台だ。

「五時になれば、駅前のどっかは開いてるっしょ! ほら、行こうぜー!」

 強引な正人くんのペースに巻き込まれ、私といずみは慌ててお菓子のゴミを片付け、鞄をひっつかんで部室を後にした。