ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 バレンタインから一週間が過ぎた頃。

 私は、最後のテストが終わった解放感も手伝って、美容院で鎖骨下まで伸びていた髪を肩のラインまでばっさりと切ってもらっていた。
 床に落ちた自分の髪を見つめながら、頭も、そして少しだけ沈んでいた気持ちも、ふっと軽くなったような気がした。

 今日はこの後、キャンパスに向かい、最後のレポート課題を提出して、いずみと会う予定だ。

 ◇

 無事に課題を提出し終え、待ち合わせのサークル部室のドアを開けると、先に着いていたいずみが、パッと顔を上げた。

「お疲れーっ!」
「いずみは今日が最後だったんだよね。お疲れさま!」
「うん、やっと解放された! ……ってか美絵、髪切ってる〜! かわい〜!」
 駆け寄ってきて私の髪を触るいずみに「へへ、ありがとう」と笑い返す。

 珍しく部室には私たち二人しかおらず、持ち寄ったお菓子を広げてのお喋りが始まった。

 ふと見ると、ホワイトボードには『一年お疲れ様でした! バスケを観に行こう!』と、来週末のスポーツ観戦イベントの告知がデカデカと書かれている。

「ねえ、美絵。あれ行けるのー?」
 ポテトチップスをかじりながらいずみが指差した。

「うーん……バイトは入ってないんだけどね。どうしようかな」

 ちなみに、祥ちゃんは少年野球のコーチのバイトが忙しくなるらしく、不参加だと言っていた。
 私が決めかねて曖昧に返事をすると、いずみは少し心配そうな顔になった。

「……バレンタインのこと、まだ引きずってる? だからあんまり遊ぶ気になれないとか」
「えっ……」

 いずみには、あの日祥ちゃんの部屋で起きた『クラスの子からの義理チョコ(多分本命)事件』を軽く相談していた。
 祥ちゃんは翌日、真面目にきっちりとそのチョコをお返ししたらしいけれど。

 それでも、私の中に芽生えた『祥ちゃんは、彼女がいても、アプローチされるのか……』というモヤモヤは、完全には消え去っていなかった。

「うーん、そうなのかな……」

 自分でもはっきりとしない気持ちを持て余している。