ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 壁一面に赤い提灯がずらりと並び、木の温もりが漂う居酒屋。
 肩が触れ合うほどの狭い半個室で、僕はクラスの男子四人でジョッキを傾けていた。

 まだ期末の試験期間の真っ最中なのだが、山場は越えたため、中間打ち上げということで集まっている。
 普段は大学の課題とバイトに追われ、週に何度も集まる彼らの誘いに乗れていないけれど、たまにはこういう息抜きも悪くない。


「……祥太郎。なんか最近、輝いてね?」

 向かいに座る正人が、数秒間僕の顔をじっと凝視した後、ボソッと呟いた。

「……はい?」

「あー、わかる。なんかカッコよくなったよな」
「幸せだから男としての余裕が出てるとか?」
 周りの連中まで身を乗り出して分析を始める。

「何それ。わかんない」
 僕は苦笑いして受け流した。

 自覚はまったくない。
 ファッションや流行には疎いし、着ているのも安くてシンプルな服ばかりだ。
 美絵に良く思ってもらえるように、身だしなみに気をつけている程度でしかない。

『カッコいい』というのは、もっとこう……。

 ふと、美絵のバイト先の同僚である柳(というらしい)の姿が頭をよぎる。

 東京出身の彼は、なんていうか、すごく垢抜けていた。
 カフェの制服の着こなしひとつとっても様になっていて。

 美絵とも……親しげに話していた。

(……いや、今のなし。思い出すな、俺)

 胸の奥がチリっと焼けるような苛立ちを覚え、僕は慌てて思考をシャットアウトした。
 醜い嫉妬なんて、するもんじゃない。

「いーなー、俺も彼女ほしいわ。もうすぐバレンタインだぜ?」
「今からアピールしまくれば、誰かしらくれねーかな」
「祥太郎さん、その輝きを俺らにも分けてくださいよ」

 ガヤガヤと盛り上がる声を「はいはい」と適当にスルーする。

 バレンタインは、美絵と会う約束をしている。

 恋人になってから、初めて迎えるバレンタイン。
 美絵はどんなものをくれるんだろう。
 美絵がくれるものなら、なんだって嬉しい。

 結局、僕も彼らと同じか、それ以上に浮ついているのだった。