ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 十二月よりも一段と寒さが厳しくなった、一月中旬。
 外の冷たい風なんて嘘みたいに、祥ちゃんの部屋はいつだってぽかぽかと暖かい。

 夕飯は二人で鍋をつついた。
「あったかい、安い、簡単、栄養がとれる」という完璧な理由で、最近のおうちごはんはもっぱら鍋ばかりだ。

「冬の鍋って、癒し度半端ないな……」
「ね。心身にもお財布にも優しいよね」

 そう言って笑い合う。

(でも、この間は少しだけ頑張ってみたんだよね)

 沸き立つスープを見つめながら、ふと思い出す。

 元旦の餅つき大会で私の両親と会う、という無茶振りに応えてくれた祥ちゃんへのお礼に、初めてビーフシチューを作ってご馳走したのだ。
 午後の授業がない日、昼過ぎからスーパーへ行き、真剣にレシピとにらめっこしながらコトコト煮込んだ甲斐あって、我ながらなかなかの出来だった。
 彼は「すっごい美味い!」と感激して、三杯もおかわりしてくれた。

 冬の鍋は最高だけれど。
 あんなに喜んでくれるなら、また手の込んだものを作ってあげたいなと思う。

 ◇

 食後、二人でキッチンに並び、食器を片付け終える。

「くっついてる方があったかいから」ともっともらしいこじつけを口にして、ソファに座る祥ちゃんにピタリとすり寄った。
 彼は「はいはい」と微笑みながら、私を邪険にすることなく受け入れてくれる。
 私に寄りかかられたまま、一緒にテレビを眺めたり、私と反対側の手で大学の課題をこなしていた。

 後期から取り始めた教職課程の授業が、なかなか大変らしい。
 テキストに向かう彼の横顔は以前よりもキリッとしていて、真剣に取り組んでいるのが伝わってくる。
 その真面目な横顔を特等席で眺められるのは、私の密かな楽しみでもあった。

 BGM代わりに流していたテレビのニュースが、スポーツコーナーに切り替わる。
 画面にサッカーの映像が映ると、自然と先日のサークルのイベントの話になった。
 最近、祥ちゃんはバイトや課題が忙しくてあまりイベントに参加できていない。
「この前のサッカー観戦、いずみの解説がすっごく分かりやすくて楽しかったよ」
 そう報告すると、祥ちゃんは「いずみ、本当にサッカー好きだよなあ」と相槌を打ちながらテキストのページをめくった。