ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

「ヨイショ!」「ヨイショ!」

 元旦の澄み切った冬空の下、地元の小さな公園に活気のある掛け声が響き渡る。

 ……なぜ今、自分がこんな状況に置かれているのか、僕はいまだに頭の整理がついていなかった。

 湯気を立てる臼の中の餅を、リズムよく手水をつけてひっくり返す僕。
 そして、力強いスイングで杵を振り下ろし、餅をついているのが――美絵の、お父さんだ。

 ◇

 遡ること、昨日の夜。

 大晦日のため二十時閉店だったファミレスのバイトを終えた僕は、家に帰ってすぐに軽食と風呂を済ませ、白いパーカーというラフな部屋着に着替えていた。

 ソファベッドに寝転んで頬杖をつきながら、テレビで流れる大晦日の特別番組をぼーっと眺める。

(……美絵、今頃実家でどうしてるかな)

 お笑い番組を観てケラケラと笑っているのだろうか。
 それとも、音楽番組を観て口ずさんだりしているのだろうか。

 元々、ひとりで過ごす時間は嫌いじゃない。
 けれど、彼女が隣にいるあの温かくて甘い幸せを知ってしまった今、つい「隣にいたらな」と考えてしまうことが増えた。

 ――ブブッ。
 そんな時、タイミングを見計らったようにスマホが震えた。
 画面には美絵からのメッセージ。

『起きてる?』

『起きてるよ』
 すぐにそう返信すると、少し間を置いて、予想外の誘いが届いた。

『もし難しかったら全然いいんだけど……明日、うちの近所の餅つき大会に来られたりする?』

 明日のお昼前には福島の実家に着く予定だ。
 家族と昼食をとった後なら抜け出せるだろう。

『行けるかも』と返すと、そこからさらに驚きの事実が明かされた。

 実は、美絵のお母さんに僕と付き合っていることがバレてしまい、顔を見たがっているのだという。
 ちなみに、お父さんにはまだ内緒にするらしい。

(美絵のご両親に……会う?)

 たしかに部屋は暖房が効いていたが、背中にじんわりと変な汗が滲むのを感じた。

 しかし、ここでビビって断るなんて男としてかっこ悪すぎる。
 僕は覚悟を決めて『わかった。行くよ』と返した。

 一人で年越しを迎え、美絵と『今年もよろしく』とメッセージを交わした後。
 僕は翌朝の早い新幹線に備え、すぐにベッドに潜り込んだのだった。