彼の隣で目覚めてからもずっと、甘い余韻の中にいるような一日だった。
祥ちゃんの誕生日当日は、誕生日の本人が作ってくれる朝ごはんからスタートした。
昨日コンビニで買った食パンをトーストして、手際よくバターを塗る。
その上に目玉焼きとカリカリのベーコンを乗せ、仕上げに塩コショウをパラリ。
「簡単なものだけど、どうぞ」と差し出されたのは、シンプルだけど食欲をそそる香りが漂うワンプレート。
「祥ちゃん、料理できるんだね」
「えっ、いやいや。安くて簡単で、それなりに栄養が取れるものなら、自分用にたまに作るってだけ」
実家にいた頃は台所に立つことなんてなかったらしいけれど、バイト先のファミレスで、人手不足の時にキッチンも手伝わされるうちに、自然と抵抗がなくなったのだという。
「……美味しーい」
サクッとしたトーストと卵のまろやかさが口の中に広がる。
私も自分用に簡単な料理なら作っているけれど、今度、手間暇かけた特別なものを彼に作ってあげようと心に決めた。
なんだかずっと、私は彼に幸せをもらってばかりな気がするから。
食後の飲み物は、彼がブラックコーヒーで、私はカフェラテを淹れてもらった。
ふと思い立って、彼のを一口だけもらう。
「……あれ?」
ブラック特有の苦味はいまだに得意じゃないはずなのに、不思議と「これなら好きになれるかも……」という予感がした。
「これは酸味が少なくて苦いタイプかな。探してみたら、美絵の好きなブラックが見つかるかもよ」
そう教えてくれる彼の大人っぽさに、また少しだけ背伸びをしたくなる。
◇
誕生日デートの行き先は彼の希望に合わせようと思っていたのだけれど。
彼が提案したのは、家で過ごしたり、近隣を散策する「まったりデート」だった。
朝、確認された時は「大丈夫」と答えたけれど……もしかすると、初めての夜を過ごした私の身体を気遣ってくれたのかもしれない。
……そう気づくと、なんだか顔が熱くなった。
昼過ぎまでは、懐かしい曲を流して「これ、流行ってたよね」と話したり、昨晩のトランプの続きをやったりして、家でのんびりと過ごした。
その後、遅めのランチをとるために、前から気になっていた近所のカフェへ向かった。
植物に囲まれたお洒落な空間。
二人が選んだオムライスは、卵がふわふわですごく美味しくて、「また来よう!」と約束した。
店を出た後は、スーパーに立ち寄った。
祥ちゃんはケーキが苦手らしいので、誕生日ケーキの代わりになる何かを買おうと思っていたのだ。
けれど、彼が並んでいる焼きそばの麺を見て「急に食べたくなった」と呟いたのをきっかけに、夜ごはんは二人で並んで焼きそばを作ることになった。
狭いキッチンに二人で並び、野菜を切る。
(なんか……夫婦みたい)
そんなことを考えて、勝手に照れてしまった。
私が小学校低学年の時、転んで顔が血だらけになったのを見たお父さんが気を失った話。
祥ちゃんが五つ下の弟のことを「野球やってるよ」「もう中学生なのに、なんだかんだ可愛いんだよなー」と目を細めて話す横顔。
お互いのルーツに触れるたび、心の距離がさらに一歩、近づいていくような気がした。
祥ちゃんの誕生日当日は、誕生日の本人が作ってくれる朝ごはんからスタートした。
昨日コンビニで買った食パンをトーストして、手際よくバターを塗る。
その上に目玉焼きとカリカリのベーコンを乗せ、仕上げに塩コショウをパラリ。
「簡単なものだけど、どうぞ」と差し出されたのは、シンプルだけど食欲をそそる香りが漂うワンプレート。
「祥ちゃん、料理できるんだね」
「えっ、いやいや。安くて簡単で、それなりに栄養が取れるものなら、自分用にたまに作るってだけ」
実家にいた頃は台所に立つことなんてなかったらしいけれど、バイト先のファミレスで、人手不足の時にキッチンも手伝わされるうちに、自然と抵抗がなくなったのだという。
「……美味しーい」
サクッとしたトーストと卵のまろやかさが口の中に広がる。
私も自分用に簡単な料理なら作っているけれど、今度、手間暇かけた特別なものを彼に作ってあげようと心に決めた。
なんだかずっと、私は彼に幸せをもらってばかりな気がするから。
食後の飲み物は、彼がブラックコーヒーで、私はカフェラテを淹れてもらった。
ふと思い立って、彼のを一口だけもらう。
「……あれ?」
ブラック特有の苦味はいまだに得意じゃないはずなのに、不思議と「これなら好きになれるかも……」という予感がした。
「これは酸味が少なくて苦いタイプかな。探してみたら、美絵の好きなブラックが見つかるかもよ」
そう教えてくれる彼の大人っぽさに、また少しだけ背伸びをしたくなる。
◇
誕生日デートの行き先は彼の希望に合わせようと思っていたのだけれど。
彼が提案したのは、家で過ごしたり、近隣を散策する「まったりデート」だった。
朝、確認された時は「大丈夫」と答えたけれど……もしかすると、初めての夜を過ごした私の身体を気遣ってくれたのかもしれない。
……そう気づくと、なんだか顔が熱くなった。
昼過ぎまでは、懐かしい曲を流して「これ、流行ってたよね」と話したり、昨晩のトランプの続きをやったりして、家でのんびりと過ごした。
その後、遅めのランチをとるために、前から気になっていた近所のカフェへ向かった。
植物に囲まれたお洒落な空間。
二人が選んだオムライスは、卵がふわふわですごく美味しくて、「また来よう!」と約束した。
店を出た後は、スーパーに立ち寄った。
祥ちゃんはケーキが苦手らしいので、誕生日ケーキの代わりになる何かを買おうと思っていたのだ。
けれど、彼が並んでいる焼きそばの麺を見て「急に食べたくなった」と呟いたのをきっかけに、夜ごはんは二人で並んで焼きそばを作ることになった。
狭いキッチンに二人で並び、野菜を切る。
(なんか……夫婦みたい)
そんなことを考えて、勝手に照れてしまった。
私が小学校低学年の時、転んで顔が血だらけになったのを見たお父さんが気を失った話。
祥ちゃんが五つ下の弟のことを「野球やってるよ」「もう中学生なのに、なんだかんだ可愛いんだよなー」と目を細めて話す横顔。
お互いのルーツに触れるたび、心の距離がさらに一歩、近づいていくような気がした。


