ふたつの弧が、重なるとき ~六年越しの両片思い。不器用なふたりが、東京で0センチメートルになるまで。~

 身体の節々が軋むような痛みに、僕は薄く目を開けた。
 カーテンの隙間から漏れる光はまだ弱く、部屋の中に青みがかった薄暗さが染み込んできている。

(……なんだ、この痛み……?)
 寝ぼけた頭で首を回そうとした瞬間、目の前にある光景に息を呑んだ。

 すぐ目の前にある、美絵のあどけない寝顔。
「スースー……」と、規則正しく小さな寝息を立てている。

(……あ……そうか……。美絵が、ここに泊まったんだ……)
 急速に覚醒していく意識とともに、昨晩の記憶が鮮明に蘇ってくる。

 楽しそうに、嬉しそうに。
 変装したり、トランプゲームをしたり、プレゼントを渡してくれたり。
『おめでとう』と言ってくれた、彼女の表情ひとつひとつ。

 それに――その後の、体温や、匂いや、声。

 細かい表情ひとつひとつまで思い出してしまい、一気に顔に血が上るのを感じた。

 だけど、それ以上に、どうしようもないほどの幸せな気持ちが、胸の奥を満たしていた。

 彼女のことは、もう既に限界まで大好きだと思っていたのに。
 昨日より今日、さっきより今と、その「好き」の最大値がどんどん更新されていくことに、ただただ驚く。

 寝返りが打てていなかったせいで背中や肩が痛いが、それも当然だった。
 壁側に彼女を寝かせ、外側に自分が寝ていたのだが、彼女がゆったりと寝返りを打てるようにと、僕はベッドの縁のギリギリのところで硬直したまま眠っていたらしい。
 けれど、体が痛いことすら、今はなんだか愛おしくて気にならなかった。

 僕は彼女を起こさないよう、そっとベッドを抜け出した。
 音を立てないように少しだけカーテンを開け、冷蔵庫から出した麦茶を一口飲んで、再びベッドの上の狭いスペースへ戻る。

「ん……」
 僕の動く気配に気づいたのか、美絵が身じろぎをした。

(やばい。起こしちゃったか?)

 焦って身を固くしたが、彼女は目を閉じたまま「……んんん」と言葉にならない寝言のようなものを呟いて、再び規則正しい寝息を立て始めた。

 その無防備すぎる姿に、たまらずフッと笑みがこぼれてしまう。
 僕はそのまま彼女の方を向いて横になりながら、ベッドの上の彼女の寝顔を、ただぼーっと眺めて浸っていた。