問題は、この先。
アドルフ様の執務室には、当然のように鍵が掛かっている。
ポケットから細い針金を取り出し、鍵穴へ差し込む。
手元に意識を集中させる。音は、立てられない。
小さな感触。
わずかな抵抗が外れ、錠が静かに回った。
祖父の言葉が、ふと脳裏をよぎる。
『執事である以上、ピッキングくらいはできなければならない』
まさか、こんな形で役立つとは思わなかった。
扉をわずかに開け、滑り込むように書斎へ入る。
すぐに内鍵を掛ける。これで、突然の侵入だけは防げる。
この部屋には何度も入ったことがある。
お嬢様の付き添い、業務の打ち合わせ――
間取りは、頭に入っている。
まず狙うべきは、書斎机の引き出し。
鍵付きの引き出しを一つ、また一つと開ける。
書類の束、古い契約書、覚え書き。
だが――ない。
女性の死因に関するものは、どこにも。
長居はできない。
書類は素早く元に戻す。配置を崩せば、それだけで侵入は露見する。
全てを探す時間など、最初からない。
この部屋にあるとしても、隠されている場所は限られている。
――残りは、どこだ。
鼓動が、否応なく早まる。
考えろ。焦るな。
アドルフ様の執務室には、当然のように鍵が掛かっている。
ポケットから細い針金を取り出し、鍵穴へ差し込む。
手元に意識を集中させる。音は、立てられない。
小さな感触。
わずかな抵抗が外れ、錠が静かに回った。
祖父の言葉が、ふと脳裏をよぎる。
『執事である以上、ピッキングくらいはできなければならない』
まさか、こんな形で役立つとは思わなかった。
扉をわずかに開け、滑り込むように書斎へ入る。
すぐに内鍵を掛ける。これで、突然の侵入だけは防げる。
この部屋には何度も入ったことがある。
お嬢様の付き添い、業務の打ち合わせ――
間取りは、頭に入っている。
まず狙うべきは、書斎机の引き出し。
鍵付きの引き出しを一つ、また一つと開ける。
書類の束、古い契約書、覚え書き。
だが――ない。
女性の死因に関するものは、どこにも。
長居はできない。
書類は素早く元に戻す。配置を崩せば、それだけで侵入は露見する。
全てを探す時間など、最初からない。
この部屋にあるとしても、隠されている場所は限られている。
――残りは、どこだ。
鼓動が、否応なく早まる。
考えろ。焦るな。
