第一部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「とりあえず今僕から話せるのはここまでだ。
君はこの事実を知って、どうする?」

少し間を置き、覚悟を込めて答えた。
「それはもちろん…止めるべきです」

「それもそうだ」
サーフェスは静かに頷き、グラスの中の赤い液体を揺らす。

「ただ手段がわかりません。対抗する手段を探さなければなりません」
自分でも落ち着いて話そうとしているが内心の焦りが微かに滲むのがわかる。

「そう、君は強いね」
ぽつりと、サーフェスが言った。

思わず見つめ返す。
「サーフェス…貴方は、どちら側ですか?」

真っ直ぐ見つめる私に、サーフェスは一瞬キョトンとした表情を浮かべた。
そしてクスクスと笑い始める。

「そうだね。そこははっきりさせておかなければならないね」
声には柔らかさが混じるが、仮面の奥に潜む冷静さは変わらない。
「もちろん僕も止めたい側だ。魔女の雫も、紅血も、蝶の会も――壊してしまいたい」

私は胸の奥で少しだけ安心する。
「そうですか…」
味方と捉えていいのか、まだ完全には安心できない。

サーフェスは遠くをみながら部屋の静けさを楽しむかのように言った。

「また1ヶ月後…13日。
蝶の会が開かれる。
その時に僕と共闘するか考えておいてくれ」

「え?」
まさかそんな提案をされるとは思わず、私は目を丸くした。

「1人より2人の方がいいだろう」
サーフェスの声には、微かな含みがある。

「それもそうですね。
考えておきます」
私はは小さく頷き、心の中で覚悟を決める。
サーフェスと別れ、部屋を後にした。