「あの金額で落札した人物……只者ではなさそうですね」
セナが、2階席にいた人物を見つめる。
すでにカーテンは閉められ、落札者の姿は見えなくなっていた。
本当なら正体を探りたいところだが、深追いは危険だ。
今夜はひとまず様子見とした方がいいだろう。
それに――裏では、きっとユウリが調べているはずだ。
「そうね……ちょっと化粧室に行ってくるわ」
「わかりました。すぐ近くにおりますので」
私は足早に化粧室へ滑り込む。
誰もいないことを確かめ、仮面を外した。
「うぇっ……はぁ……」
個室に入り、吐き気をこらえる。
胃液しか出てこないのに、喉が焼けるように痛んだ。
さすが貴族用オークション会場だけあって、
化粧室まで豪奢な造りだ。
個室内には水道も備え付けられており、
そこで口元を洗う。
――黒いダイヤ。
――よみがえる、断片的な記憶。
誰かが言い争っている。
男と、女の人。
「暴走」
「魔女の雫」
……違う。
これは、誰かの話じゃない。
私の、記憶?
わからない。
でも記憶の中の女性の名前を男が叫んでいた…
アイリスと。
鏡に映る私は、真っ青な顔をしていた。
あの女性はだれ?
でも…私は知っている。
「……だめ」
ここで考えても、答えは出ない。
今は、この《蝶の会》について調べることが先だ。
そう心に決め、仮面を付け直す。
セナが、2階席にいた人物を見つめる。
すでにカーテンは閉められ、落札者の姿は見えなくなっていた。
本当なら正体を探りたいところだが、深追いは危険だ。
今夜はひとまず様子見とした方がいいだろう。
それに――裏では、きっとユウリが調べているはずだ。
「そうね……ちょっと化粧室に行ってくるわ」
「わかりました。すぐ近くにおりますので」
私は足早に化粧室へ滑り込む。
誰もいないことを確かめ、仮面を外した。
「うぇっ……はぁ……」
個室に入り、吐き気をこらえる。
胃液しか出てこないのに、喉が焼けるように痛んだ。
さすが貴族用オークション会場だけあって、
化粧室まで豪奢な造りだ。
個室内には水道も備え付けられており、
そこで口元を洗う。
――黒いダイヤ。
――よみがえる、断片的な記憶。
誰かが言い争っている。
男と、女の人。
「暴走」
「魔女の雫」
……違う。
これは、誰かの話じゃない。
私の、記憶?
わからない。
でも記憶の中の女性の名前を男が叫んでいた…
アイリスと。
鏡に映る私は、真っ青な顔をしていた。
あの女性はだれ?
でも…私は知っている。
「……だめ」
ここで考えても、答えは出ない。
今は、この《蝶の会》について調べることが先だ。
そう心に決め、仮面を付け直す。
