カロンはフィリーネの言葉に被せるように発言した。そして、居てもたってもいられないといった様子で足早にテラス席を後にしてしまった。
残されたフィリーネは呆気に取られる。
「カロンさんは本当に服作りがお好きなのですね」
きっと素晴らしいドレスが完成するだろう。
そんな予感めいたものを感じながら、フィリーネは残りのクッキーを頬張る。
「――空都の舞踏会ですか」
雲一つない空を仰げば、立派なお城がある空中都市が浮かんでいる。そういえば、数ヶ月前に招集がかかったといってシドリウスとヒュドーが空都の城に登城していた。
現竜王陛下のシドリウスは運命の番を見つけるために百年前から玉座を離れている。
その間、竜王陛下に代わって政治を主体で動かしているのがミリーネの婚約者・アーネストの生家、ランドレイス家だ。
ふと、フィリーネは昔ミリーネから聞いた話を思い出す。
『一度玉座を離れた竜王陛下が空都に戻られるのは、運命の番を見つけた時だけ。そして、陛下のご帰還を祝うために空都では貴族たちが集まって、盛大な舞踏会を開くのよ』
空都で舞踏会が開かれるのなら、竜王陛下に運命の番が見つかったのかもしれない。
竜王陛下の運命の番はどんな人なのだろう。
いくら冷酷無比で有名な竜王陛下でも番の前では角が取れるのだろうか。
もし自分がシドリウスの運命の番だったらと想像してみる。
シドリウスは真面目でとても優しくて、いつもフィリーネを大切に扱ってくれる。
フィリーネは頭や頬を撫でてくれる、あの大きな手が好きだ。
何よりも、寝ている時の無防備なシドリウスの姿を独り占めできるのが嬉しくて仕方なかった。こんなシドリウスを知っているのは自分だけ。
そんなちょっとした独占欲のようなものがフィリーネの胸の中にふわりと生まれる。
同時に、寝顔を思い出して心臓がドキリと跳ねた。



