迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



(シドリウス様は生贄の私を竜王陛下に報告なさるつもりなんですね)
 生贄の儀式は二百年前に禁止されたとヒュドーが言っていた。

 本来であれば乙女を食べるのは御法度ではあるが、フィリーネの場合は既に生贄の儀式が完了してしまっている。したがって、シドリウスは竜王陛下にフィリーネを食べても罪に問われないか確認を取るつもりなのだろう。

(これでようやく謎が解けました。カロンさんが礼儀作法と教養を教えてくれているのは、私が竜王陛下の前で粗相しないようにするためだったのですね。冷酷無比であらせられる竜王陛下の前で粗忽な態度など取れば、間違いなく首チョンパです!)
 竜王陛下の逆鱗に触れるところを想像したフィリーネは、思わず自分の首に手を当てた。

 もし竜王陛下に処刑されてしまったら、これまでの努力が水の泡になってしまう。
 フィリーネは一日でも早く大きくなるように、毎回食事は残さずに食べた。
 おかげで、アバロンド家に居た時よりも身体の肉付きは良くなったと思う。

 昨夜、お風呂上がりにお腹の肉を摘まんでみたら、以前よりも厚さが増していた。
 この調子でふくふくと太っていけば、シドリウスには美味しく食べてもらえるはずだ。


 竜王陛下に処刑される未来は是非とも回避したい。居住まいを正したフィリーネは改めてカロンに指導をお願いした。
「挨拶で粗相しないように、そしてきちんと踊れるように頑張ります。カロンさん、引き続きご指導よろしくお願いします」
「はい。もちろんでございますよ。一緒に頑張りましょう」

 断られてもおかしくない状況だったのに、親切にもカロンは快諾してくれた。
「シドリウス様も踊るのを楽しみにしていらっしゃるのでございますよ。……それでですね、お嫁様」

 普段は淑やかなカロンの目が突然ぎらついた。