迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



 シドリウスの顔をよく見ると、昨夜よりも顔色は良くなっている。
 どうやら言っていることは本当らしい。

「シドリウス様の睡眠のお手伝いができて嬉しいです」
 役に立って良かったと、フィリーネがにへにゃりと笑う。すると、目の前が暗くなった。
 気づけば、シドリウスに抱き締められている。

「シドリウス様?」
「今夜も一緒に寝てくれないか? フィーが側にいてくれたらよく眠れる。俺にはフィーが必要なんだ」
 フィリーネは目を瞠った。

 これまでハビエルとミリーネからは忌み子として疎まれてきた。使用人たちは親切だったが、一線を画されているのは肌で感じ取っていた。
 要するに、アバロンド家でのフィリーネは誰からも必要とされない存在だった。

 だから生贄の花嫁という役目をもらい、必要とされて嬉しかった。早く食べてもらいたくて躍起になっていたけれど、こうして新たな形で彼の役に立てたのなら嬉しい。

「私で良ければいつだって側にいます」
「ありがとう。さて、そろそろ身支度を済ませて食堂へ行こうか。実は夜から空腹だったんだ」

 シドリウスはベッドから降りると、うーんと伸びをしてからカーテンを開けた。
 はだけたシャツからは、胸板が垣間見える。

 引き締まった筋肉に思わず見とれてしまうフィリーネだったが、空腹という言葉を聞いて我に返った。

「もしや、寝る前に夜食的な意味で味見したかったのですか? だったら今からでも……」
「いや、それは結構だ」

 キッパリと断られたフィリーネは大人しく引き下がるのだった。