シドリウスはくるりとこちらに向き直った。
「姉の方はおまえを虐待していたが、家庭環境のせいもあるから情状酌量の余地はある。よって、性根を叩き直すために無期限の修道院送りになった。これはランドレイス公爵が決めたことだ。婚約を破棄するかどうかは、ミリーネの今後の行い次第だそうだ」
「そうですか。ランドレイス家のお二人には深謝いたします」
本当だったらミリーネはランドレイス家からも訴えられ、婚約破棄された上で処罰を受けていたはず。
フィリーネはアーネストと公爵の懐の深さに感銘を受けた。
「まあ、舞踏会での件は感情を抑えられなかった俺にも非があるとして……」
頬を掻きながら、ごにょごにょとシドリウスが歯切れの悪い物言いをする。やがて、咳払いをしたシドリウスは真面目な顔つきになった。
「処遇は以上になるが、悲しいか? 曲がりなりにも二人はフィーの大事な家族だ」
フィリーネは思案投げ首になる。
悲しいかと訊かれたら、意外にもそうでもないというのが本音だ。
ハビエルとミリーネを『お父様』、『お姉様』と呼んではいたが、これまで虐げられてきたため、家族と言われてもフィリーネはピンとこない。
寧ろ、召し使いとして扱われてきたので『雇用主』という感覚の方が近かった。
したがって、フィリーネは二人がどうなろうと何も感じない。
それよりも懸念する点が一つだけあった。



