「私のような者が公爵様の隣で勝手に添い寝をして大丈夫でしょうか? もしもランドレイス様や使用人の方が入って来られたら、どう説明すれば……」
添い寝したら治ると言って納得してくれる可能性は限りなく低いと思う。それが事実だとしても、胡乱な態度を取られて終わるだけだろう。
最悪の場合、不法侵入した痴女として捕まってしまいそうだ。何よりも、シドリウスの時には添い寝ができたのに、ランドレイス公爵にはできない自分がいた。
よく分からないが、シドリウスの時と違って公爵の場合は羞恥心の方が勝ってしまう。
「でも、私が添い寝しない限り公爵様の夢塞病は治りません」
公爵の回復を考えたら背に腹はかえられない。
「もう成り行きに任せるしかありません!!」
フィリーネが意を決してベッドに膝をついていると、頭上で気配を感じた。
紫紺蝶だ。普段と違って焦っているのがよく分かった。
「どうしたんですか?」
フィリーネが人差し指を差し出して尋ねるが、紫紺蝶は指には留まらずにフィリーネの顔の周りを飛んでくる。
添い寝はしなくていいから公爵の手を握って力を使うよう言われている気がする。
「分かりました。やってみます」
フィリーネはベッドから降りると床に膝をつく。
言われたとおりランドレイス公爵の手を握って、夢塞病から解放されるように祈った。
指先から紫色の光の粒が現れ、公爵の手に馴染むように消えていく――。



