迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



「……おまえは、我々の魔法契約書を悪用して使用人たちへ一方的な雇用契約を結んでいたな?」
 質問をした途端、ハビエルの顔色がさらに悪くなった。
「ま、魔法契約書を知ってるとなるとあなた様は、まさか竜王陛下でいらっしゃいますか?」
「竜人と分かって俺の正体に気づいたと思っていたんだが、以外と察しが悪いんだな」
 シドリウスは片眉をピクリと動かす。

「いや、だって竜王陛下は顔色が悪くて爬虫類をぺしゃんこにした醜男だと……」
「ああ、それは粛清した貴族たちが腹いせに流した噂だ。番以外にどう思われようと関係ないから流したままにしておいた」


 シドリウスはハビエルの胸ぐらをぱっと放す。
 解放され、腰が抜けて力が出ないのかハビエルはその場にへたり込んだ。
 シドリウスは怯えるハビエルを見下ろしながら、自己紹介をする。

「改めて挨拶してやろう。俺の名はシドリウス。オルクール王国を統治する君主だ。おまえの魔法契約書の悪用に関しては隠しても無駄だ。既に調べはついている」
 抵抗しても無駄だと伝えるが、往生際の悪いハビエルは額に脂汗を滲ませながらもしらばっくれる。
「な、何のことかさっぱり。私は適正に魔法契約書を使っただけです」
「そこまで言うのなら、現物を見て放した方が良さそうだな」

 すると、それまで静かに佇んでいたヒュドーが風の精霊であるグラウクスを呼び出した。
「精霊界より契約者の声に応え、姿を現せ。我に力を貸したまえ」
 現れたグラウクスの嘴には、丸まった書類が挟まっている。

「この魔法契約書はアバロンド家の保管庫から拝借しました。あ、安心してください。協力してくださった方がいましたので盗んではいませんよ」
 ヒュドーは泥棒を働いたわけではないと先に伝えると、すぐに本題に入った。