迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



 ヒュドーが知らないのも無理はない。
 闇の精霊は光の精霊以上に特別な存在で滅多にお目にかかれない。そして闇の精霊が人間を祝福するというのは、シドリウスにとっても初めての事象だった。

「光が存在するなら、必ず闇も存在する。自然的なことだ。……まさか、アバロンド家はフィーが闇の精霊に祝福されたのを恥じて虐げていたのか?」
 自分の考えが思わず口を衝いて出る。

 それを聞いたヒュドーは辺りを確認してから声を潜めた。
「先代の手紙と併せてアバロンド家のことでもご報告があります。実は――」
 ヒュドーが内容を詳らかに伝えると、シドリウスはたちまち不敵な笑みを浮かべた。


「その報告、随分と待ち侘びたぞ。それが事実なら俺はもう容赦しない。遠慮なくやらせてもらうぞ」
「遅くなり申し訳ありませんでした。どうぞ、存分に暴れ回って……と言いたいところですが、常識の範囲内でお願いしますね」

 言い含めてくるヒュドーに対して、シドリウスがアイスブルーの瞳をギラつかせている。
 すると突然、第三者の声がした。

「今夜の舞踏会は例年以上に素晴らしい。そうは思いませんかな?」
 シドリウスとヒュドーが同時に視線を向けると、下卑た笑みを浮かべたハビエルが立っていた。
(おあつらえ向きなことに、まさか向こうからやって来るなんてな)

 ハビエルは何かを企んでいるようで、媚びるように手を揉んでいた。
 こんな男がフィリーネを虐げていたと想像しただけで反吐が出る。

「失礼、私はハビエル=アバロンドと申します。先ほどあなた様が踊っていた娘の父親ですよ」
「おまえが父親だということくらい知っている」
 ハビエルはシドリウスの横柄な態度に不満を感じたようだ。
 一瞬だけ顔を顰めるも、すぐに和やかな笑みを浮かべた。