自覚した瞬間、心臓の鼓動が急速に速くなる。全身に熱が駆け巡っていく。
しかし、この想いがシドリウスに届くことは決してない。
(私はどこまでいってもただの生贄です。どれだけシドリウス様をお慕いしても、運命の番には敵いません)
好きを自覚したと瞬間から失恋が確定している。これほど残酷な結末はないだろう。
だが、フィリーネには生贄の花嫁という奥の手がある。
(私は番にはなれませんが、シドリウス様の栄養にはなれます)
胸の上に手を置いたフィリーネは、失恋の痛みを感じながらも自分の役目を噛みしめる。
シドリウスの生贄の花嫁は自分だけだと思うと幸せになれた。
すると、ミリーネが舌打ちをする。
「何一人で感慨に耽っているのよ。私はおまえの絶望してどん底に落ちる顔が見たいの。脳天気な顔を見てるとむかつくわ。それから――」
ミリーネは左手首を掴むとフィリーネの薬指からピンクスピネルの指輪を奪い取る。
これは肌身離さずつけるようにシドリウスと約束した大事な指輪だ。
他の宝飾品はミリーネに渡したけれど、これだけは渡すつもりはない。
「お姉様、返してください!」
「ちょっと、放しなさいよ!!」
指輪を取り返そうと手を伸ばすが、ミリーネがそれを阻む。
最終的にフィリーネはミリーネに突き飛ばされてしまった。



