迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



「いけません、お姉様! 私に成り代わるなんてダメです。そんなことをなさってはお姉様の人生が終わってしまいます!」
「あははは。終わるのはおまえの人生でしょ。何を焦っているの」
「お姉様の身体は素晴らしい肉付きですし、お胸だってふかふかなのは認めます。私に勝ち目はありません。火を見るより明らかです」

 どちらの身体が美味しそうかと問われたら、当然それはミリーネだ。
「自分の立場をやっと理解したのね」
「ですがこの数ヶ月、私は一生懸命自分の身体を磨いてきました。お胸はふかふかにはなりませんでしたが、それなりの身体になったつもりです。今さらこの座をお姉様に明け渡せません!」

 食べられるのは自分だと必死に訴えていたら、それまで楽しげだったミリーネがすっと薄紅色の目を細めた。
「おまえ、余程あの人が好きなのね」
「へ?」


 フィリーネは固まった。
 ミリーネは一体何を言っているのだろう。

(好き? 私がシドリウス様を?)
 そんなはずはない。コロッと恋に落ちてしまいそうな瞬間は何度かあったけれど、好きになったことなんて一度も……。
 ない、と頭の中で呟こうとした瞬間、もう一人の自分に尋ねられた。


 ――本当に? シドリウス様を好きではありませんか?


 フィリーネの心臓が大きく跳ねる。
「えっと、私は……その……」

 シドリウスは出会った時から優しくて親切だった。
 体調を心配してくれたし、贈り物の花や指輪もくれた。
 生贄だからとぞんざいにはせず、一人の人間として扱ってくれた。
 いつもこちらを気遣ってくれて、フィリーネが好きなものをたくさん与えてくれた。

 頭の隅で警鐘が鳴り響く――が、遅かった。
(私はシドリウス様が…………好き、みたいです)