大広間に足を踏み入れたフィリーネは眩しすぎる世界に圧倒されていた。
口を半開きにして立ち尽くしていたら、カロンが声をかけてくれる。
「お嫁様、どうされましたか?」
カロンはヒュドーのエスコートを受けて会場入りしていた。今は挨拶回りでいなくなったヒュドーと別れ、フィリーネとシドリウスに付き添っている。
「初めての舞踏会があまりにも立派な会場だったので見入ってしまいました」
フィリーネがそのままの感想を伝えると、カロンが首を傾げる。
「今夜の会場はランドレイス家の中でも地味な方でございますよ」
「え……」
さらりと告げられてフィリーネは目を丸くした。
これを地味だというのなら、他は壁や天井にびっしりと宝石が埋まっているのではないだろうか。
「数代前のランドレイス公爵は芸術をこよなく愛する人だった。だから、他の屋敷には素晴らしい絵画や陶器、家具が展示されている。だが、ここにはその類いが一切ない。カロンが地味というのはそういう意味だ」
「な、なるほどです」
シドリウスから補足を受けてフィリーネは納得した。
この会場にはその芸術作品がほとんど展示されていない。内装は豪華だが、それを除けばシンプル。だからカロンは地味だと表現したのだ。
(ですが、ここに立派な芸術品のような方が……)



