「ところでフィー、俺が贈った指輪はちゃんとはめているな?」
「はい。もちろんです」
フィリーネはシドリウスに見える高さまで左手を持っていく。
薬指にはピンクスピネルの指輪がはまっていた。
それを見て、満足げにシドリウスが頷く。
「偉いぞ。その指輪は虫除けだから家に帰ってくるまで肌身離さず身につけておくんだ」
「わあ、この宝石にはそんな効果があるんですね!」
夏真っ盛りとあって、今は虫が湧きやすい季節だ。
ピンクスピネルに虫除けの効果があるとは知らなかった。
虫刺されに遭わなくて済むのなら肌身離さず身につけておこう。
フィリーネは薬指にはまっている指輪を眺めながら、言いつけを守ろうと誓った。
ランドレイス家の古城には、大勢の貴族が詰めかけていた。
舞踏会の会場となっている大広間には、様々な年代の紳士淑女がグラスを傾けながら歓談している。
白と金を基調に構成されている古城だが、大広間は赤色の壁で覆われていた。光に当たると植物の柄が浮かび上がる瀟洒な造りになっていた。
さらに天井や壁の至るところには金箔の彫刻が装飾されていて、天井からつり下がるクリスタルのシャンデリアが豪華絢爛さを際立たせている。



