(竜王陛下に挨拶しに行く日はきっと緊張して楽しむ余裕はないでしょうし、一度くらい心から舞踏会を楽しんでもいいですよね)
フィリーネがシドリウスに食べられて人生が終わるのは決定事項だ。
楽しい思い出の一つや二つを作ったところで罰は当たらない。
フィリーネは膝の上にのせていた拳をぎゅっと握り締める。
「そうですね。是非参加させてください」
フィリーネの返事を聞いて、シドリウスは破顔した。
「なら、ヒュドーに参加する旨を伝えておこう」
「ありがとうございます。ふふ、週末が待ち遠しいですね」
舞踏会に想いを馳せてにこにこしていたら、シドリウスが憐憫の表情で尋ねてくる。
「そんなに参加したかったのか? フィーにとって舞踏会は夢だったのか?」
尋ねられたフィリーネはきょとんとした表情を浮かべた。
舞踏会への参加は特に夢見ていたわけではない。どうしてこれほどわくわくしているかというと、先日のお祭りでシドリウスと踊ったのがとても楽しかったからである。
またあの時と同じ体験ができたらと、密かに願っていたのだ。
フィリーネは素直に心情を述べた。
「夢というより、シドリウス様と一緒に踊れるのが嬉しいんです。だから週末がとっても待ち遠しいんですよ」
すると、シドリウスの尖った耳の先がみるみるうちに赤くなっていく。
シドリウスは困った様にため息を吐いた。
「フィーは不意打ちで爆弾発言をしてくるな」
「爆弾発言? 何か気に障ることを言ってしまったのなら申し訳ないです」
「これは俺側の問題だから謝らなくていい。冷めないうちに食べてしまいなさい」
シドリウスが皿に残っている昼食を食べるよう手で示してくるので、フィリーネは元気よく返事をしてから平らげた。



