迷信の生贄花嫁、食べられると勘違いしたまま竜王陛下の溺愛が始まって戸惑ってます~食べるって物理的な意味ですよね?~



(上流階級の優雅で重厚なダンスとは違って、平民のダンスは陳腐で低俗ねぇ)
 自分とは住む世界が違うと改めて実感していたら、目を疑う光景が飛び込んでくる。
 ダンスを踊っている中にフィリーネがいたのだ。眼鏡はかけていないが、あれはフィリーネで間違いない。

「どうして忌み子が踊っているの? しかも男と一緒ぉ!?」
 ミリーネは驚愕した。男と楽しく踊っているフィリーネは屋敷にいた時とは比べものにならないほど幸せそうだった。

 踊っている相手は一体どんな人物だろう。
 ミリーネは目を凝らして相手を確認する。
「まあ、なんて美しい顔なの!」

 ミリーネは思わずため息を吐いてしまう。フィリーネと一緒に踊っている相手はアーネストを軽々と凌ぐ絶世の美青年だった。
 美青年が優しい面差しでフィリーネとダンスを共にしている。そう思った途端、ミリーネは敗北感のようなものに襲われた。

 ただ不幸を振り撒く存在で、自分よりも劣っているはずのフィリーネが美青年と幸せそうにしているのが許せなかった。
「私はアーネスト様に見向きもされずに辛い想いをしているっていうのに」
 地団駄を踏んでいると音楽が鳴り止む。

 やがて、踊っていた男性たちが一斉に女性へ贈り物を始めた。
 それには当然あの美青年も含まれるのだが、あろうことに大粒の宝石――ピンクスピネルがついた指輪をフィリーネなんかに贈っているではないか。