さよならを言わなかった恋

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この物語は、「どっちを選ぶか」の話ではありませんでした。
たぶん、恋って本当はそういうものじゃないからです。
人を好きになる気持ちは、きれいに順番に並んではくれません。
忘れようとしても残る想いもあるし、前に進もうとしても足を止める記憶もあります。
結月にとって湊は、“戻りたい過去”でした。
そして颯真は、“これからを歩く今”でした。
どちらが大切かを決めることは、きっとできません。
だから結月は、選ぶ代わりに――
自分の中の時間と向き合うことを選びました。
この物語で描きたかったのは、
「忘れること」が前に進むことではない、ということです。
忘れられない恋は、終わっていない恋ではありません。
心の中に、ちゃんと居場所を持った恋です。
思い出すと少しだけ苦しくて、
でも同時に、少しあたたかい。
そんな記憶が、人を大人にしていくのだと思います。
もし読んでくれたあなたの中にも、
ふとした季節で思い出す誰かがいるなら、
それはきっと、消えなかった失敗じゃなくて、
あなたの人生に残った大切な季節です。
この物語が、誰かの記憶にそっと寄り添えたなら嬉しいです。
最後まで、本当にありがとうございました。
――作者より