視える?


愛華(あいか)、ちょっと買ってきてくれない?テトラアイス」

「えー、嫌だよ、めんどくさい。輝が買いに行けばいいじゃん」

テトラアイスは、(ひかる)が一番好きなアイスで、自販機で売ってるんだ。

けど私には、そんなアイスのどこがいいのか分からない。

「頼む、この通りだ!!」

頭を下げる輝が可哀想になり、溜め息をつく。

「あーもう、分かったよ……」

「おっ、やったー!南公園に売ってるから、頼むぞ!」

その声を背に、渋々立ち上がった。


―――そういえば……。

ふと南公園にまつわる都市伝説を思い出し、目を伏せた。

それは、『僕のこと、視える?』という声が聞こえた時に、嘘を言っては駄目というもの。

町一帯に流れている噂話だ。

だけど、もう小六だし、そんな子供騙しは信じない。

もんもんと考えているうちに、公園の入口にたどり着いた。

「あっ、自販機みっけ」

テトラアイスの自販機を発見し、私はサンダルをパタパタと鳴らして駆け寄った。

アイスを買ってひと息ついていると、ひやりとした空気を感じ体を震わせた。

夏なのに、なんでだろ……と思っていると、耳に入ってきた、幼い声。


「―――僕のこと、視える?」


ひっと、声を出した。

これって―――都市伝説の話と一緒だ。

視える、視えない、視える、視えない。

どうやって答えるべきか、私はパニックになった。

だけど、伝説では、嘘を言っては駄目といわれていた。

こわごわと振り返って、何かの姿が視えるかどうか、そっと確認する。


……な……、何もない……。


「みっ、視えない!」

私は、とっさにそう叫んだ。 きっとこれで何も起こらないはず。

さっさと戻ってアイス渡して、漫画の新刊を読もう……。

そう考えて、前を向き直したら。


「嘘だ」


目の前に出てきた、男の子。

体温の感じられない肌色に、生気のない瞳。


視てしまった。

直感的に、ヤバいと感じた。

目を瞑って、再び開けると、彼はニヤリと笑った。


「仲間だね、愛華ちゃん」


ぼうっとして何も考える気になれず、ただコクリと頷いた。

そして数日後、輝の姿を見た。

助けを求めるように近づいても、反応はない。


不安になって、私は輝に向けて問いかけた。



「―――私のこと、視える?」