桜の咲くころ、思い出して

「恋はしない!」

声を上げた、とにかく大きな声で。

「これは恋なんかじゃないし、恋なんかしないからっ」

『それは無理だろ~~~~!』

ケラケラケラーッとヨシノが笑った。

AIは学習機能付きって言うけど、ここで笑うタイミングはどこで学んだんだろ?よくわからない。

『オレにはわかるからな!伊田を見てる時の奈絵の脳はガンガン刺激されていることを!!』

「……。」

見えてないけどドヤァってしてるのだけはわかる。

…見えなくてもわかっちゃうのは私も、か。

『でも俺は嬉しいから、奈絵と別れるのは寂しいけど奈絵が笑ってる未来のがオレは嬉しい』

「ヨシノ…」

『伊田だけじゃない、真島晴香だっているしこの先たくさんの人と出会うと思うよ奈絵は』

そんな未来、想像したこともなかった。

『大切な人はまだまだ出来る、恋人だけじゃなく友達や先輩後輩に上司とか部下とか!』

ヨシノがいなかったら今もあの頃のふさぎ込んでいた私だった。

『たまに泣くこともあるかもしれないけどそれでも生きててよかったて思うことはいっぱいある、奈絵にはそんな世界を知ってほしい』

ヨシノがいたから、ヨシノはいつも私のことをー…


『奈絵のこと忘れないから』


忘れるのは怖いこと、覚えてないのはかなしいこと。

それは誰より知ってる、わかってる。


“オレの記憶には残る”


「ヨシノ…っ」

のどがきゅぅーって絞られたみたいに苦しい、泣きすぎて痛くてしょうがない。