桜の咲くころ、思い出して

「てか同じクラスだよね~、えーっと名前なんだっけ?」

「あ、あのっ」

「待って思い出すから!」

「……。」

あごに手を当ててう~んとうなりながらキュッと目を閉じて必死に思い出そうとする態度は伝わるんだけど…

出てくるのかな?大丈夫かな?

どんどん気まずくなってくんだけど…

『これ知らないだろ』

ヨシノが地味に傷付けてくるし。

だけど知らないものは思い出すこともできないよね。


ここは私から名乗った方が…!


「あ、インコちゃん!」

「……。」

『……。』

…そっか、学校(ここ)では私の名前はそうだった。

私が名乗らなくても知ってるんだ、その名前は。


それが私なんだね、伊田くんの中でも。


「え、違った!?そう呼ばれてなかったっけ!?」

「…そう、かな」

たぶん。

そう呼ばれてるのは間違いじゃないし、きっとその方が知られてる。

誰になんて言われようといいしね、私の名前なんて…

「で、本当の名前は?教えてよ」

「え…?」

「本当の名前は違うんでしょ?」

ちゃんと伊田くんの顔を見たことがなかったけど、顔のキレイな男の子なんだなぁって思った。

色白の肌にふわふわした猫っ毛が目にかかって、その瞳は澄んでいて。

「本当の名前は?」

「…川瀬奈絵、です」

「あ、川瀬ちゃん!」

ポンッと手を叩いた。

大きく目を開いて、ついでに口も開けて、わぁっと表情を明るくして。