桜の咲くころ、思い出して

痛かったことも忘れて起き上がった。

久しぶりに頭の中で響く声に心臓がドキンッとする。

「よ…っ、ヨシノ…?」

耳を澄ませて、息をするのも邪魔で。


今のは聞き間違いだった?

私が願うあまりに聞こえてきたまぼろし…?


「ヨシノっ!」


私の声が聞こえてるのなら返事をしてー…!


『寝てもないのにベッドから落ちるってなんだよ~』


…っ!


ヨシノだ、ヨシノの声だ。


頭の中で聞こえてるヨシノの声だ…



今、ハッキリ聞こえてる。



「ヨシ…っ」


一気にあふれ出す、ボロボロとこぼれ落ちる大粒の涙が床に落ちる。

「他に…っ、もっと言うことあるでしょ…っ!」

うわーんと声を上げて、子供みたいに泣いてしまった。

恥ずかしい、でもヨシノだもんヨシノにそんなこと思うことないもん。

「もっと他にっ、ずっと声っ…聞こえなくてっ」

ひっくひっくと声が詰まっちゃって、だけど声に出さないとヨシノに届かない。

ヨシノと話がしたくて、たくさん言いたかったことがあって、振りしぼるみたいに声を出した。

「わたっ、私ね…友達ができたの!学校でっ、友達…できたっ」

『うん、知ってる』

「あっ、あと…伊田くんにっ…話したよ、ヨシノのこと!それでっ」

『うん、知ってる』

「だから…っ」

何それ、なんなの…っ

なんで全部…!

『見てた、奈絵のこと』

バケツをひっくり返したみたいに涙が止まらない。

ぐちゃぐちゃだ、もう声が出て来ないよ。

「…っ」

会いたかった、ずっと会いたかった。

やっと聞こえた声がうれしくて、またヨシノの声が聞こえたことがうれしくて、私を呼ぶ声がうれしくて…


また一緒にいられる?


これからまたヨシノと一緒にー…



『奈絵にお別れを言いに来た』