桜の咲くころ、思い出して

「奈絵、もう寝るの?」

早めにお風呂に入って髪の毛を乾かした。
もう自分の部屋に行こうかなと思って階段に足をかける。

「うん、今日は疲れからもう寝るよ」

なんだか今日は眠れそうな気がしたから、いつもより早く寝ようかと思った。

「そう、じゃあママはお風呂入ってくるね。おやすみ」

「うん、おやすみママ」

階段を上がって自分の部屋のドアを開ける。

夏の大掃除は暑かったし大変だったけど、最後はみんなでフルーツポンチを食べて…伊田くんが笑うとみんなが笑うから、私も笑って、森木先生も笑ってた。

それがすごく楽しくて、学校って楽しいんだなぁって思った。

だって、私はもう1人じゃなかったから。


私もう1人じゃないんだよ…


パタンッと静かにドアを閉めた。

さぁ寝ようか、まだ明日も学校だしね。

もうすぐ夏休みだし、夏休みは宿題がいっぱいって言ってた。
勉強はそんなに苦手じゃないけど…

ヨシノが教えてくれたから。

だけど、もう教えてくれる人はいないから自分でやらないとね。

大丈夫、私できるから。

もう1人じゃないし…


でもずっと1人じゃなかったけどね。


「ヨシノ…」

いつも一緒にいてくれたもんね。

「……。」

声は、聞こえないけど。

少しずつ慣れていくのかな、これがあたりまえになっていくのかな。


それはなんだか寂しいね。


「ヨシノ、おやすみ」

ふとんに入る、さっ寝よ…

あ、電気消し忘れてる!リモコンどこだっけ?机の上だ!

起き上がってリモコンの方に手を伸ばす、ちょっと遠いけど伸ばせばギリギリ手がとどっ

「うわぁっ」

ドサッとベッドから落ちた。

ふとんから出るのがめんどくさくて身を乗り出して手を伸ばしたからバランスを崩した。

痛い…、ヨシノがいたら絶対笑われて…っ


『どんくさいなぁ、奈絵は』


え…

今、声が


声が聞こえた?



頭の中で声がー…っ!