桜の咲くころ、思い出して

『室長だ』

あ、室長!?

うちのクラスの室長、室長の…!?


伊田友也(いだともや)


ヨシノは私の考えてることが聞こえなくてもわかるみたい、名前を覚えてなかった私に教えてくれる。

「い、伊田くん…?」

そういえばホームルームの最後あいさつしてたよね、伊田くんの声でいつも授業が始まって終わるんだった。

「あ、すみません!邪魔でっ」

「めちゃくちゃ派手にやったね~」

「すぐに片づけ…っ」

よう、と手を伸ばすと伊田くんも同じように手を伸ばした。
散らばったノートを1冊、また1冊と、遠くに飛んでいったノートまで拾って持って来てくれる。

「あ、あの…私やるんでっ」

「え、なんで?」

「なんでって私が落としたから…」

拾ってくれたノートを受け取りながらおそるおそる伊田くんの方を見る。

この中に伊田くんのノートも入ってるのに、思いっきりバラまいちゃった…

怒られるかな!?どうしよう!?

さっさと受け取って他のやつも拾わなきゃってあせってるのに、じーっとこっちを見つめる伊田くんはなぜかノートから手を離してくれなくて。

な、なに…?

あ、これはやっぱり怒ってる!?怒ってるんだ!

ノート落としちゃったから…っ!

「もしかしてそーゆうパフォーマンスだった!?」

「え、パフォーマンス?」

『こいつ何言ってんだ?』

「よくあるじゃん、ビンとかお皿とか壁にぶつけてストレス発散するやつ、それかなって」

「そっ、そんなんじゃないです!階段下りてたら落としちゃっただけで…っ」

急に伊田くんがノートから手を離したから力の抜けたノートにびっくりしちゃって顔を上げると…


笑ってた。


「嘘だよ」

くすって私を見て笑ってた。

「2人でやった方が早くない?」

今度はにこっと微笑んで、その瞬間空気が変わったみたいだった。

どうしてかわからないけど、そんな風に感じたの。