桜の咲くころ、思い出して

季節はもう夏で、あの桃の木もとっくに散っていた。

こんな暑いんだもんね、そりゃそうだよね。

「川瀬ちゃん、ゴミいっぱいになった?」

「伊田くん…あ、ごめん!待って、今やるからっ」

今日は夏の大掃除、あの桃の木の前の草取りが私の担当場所。
草を刈ってゴミ袋に入れる…んだけど、しまったぼぉーっとしちゃってた。

「川瀬ちゃん、大丈夫?」

「え、何が?」

「最近元気ないよね」

「そ、そんなことないよ!」

しゃがみ込んで集めた草をゴミ袋に入れていく、すでにたくさん草の入ったゴミ袋はパンパンで。

「もしかして俺に飽きた!?」

「飽き!?飽きてないよ、全然!」

「そ?ならいいけど」

…今のでよかったのかな?でも飽きた?
って言われたから。

「…最近ずっとそんな感じじゃない?」

「え…?」

「何があったか、教えてよ」

伊田くんが私の隣にしゃがんだ。

私の中でぐるぐる回ってこびりついて離れない、そんなの理由は1つしかないんだけど…

「ちょっと寝不足で…」

それは、言えないから。

結局伊田くんに言えなかった、ヨシノのこと。

「最近あんまり眠れてないからっ、それでちょっと…ねっ」

「…その理由を、教えてほしいんだけどな」

伊田くんが目を伏せた、伊田くんがそんな顔するなんて初めて見た。

私がそんな顔させちゃった。

「…。」