桜の咲くころ、思い出して

わーっ、やっちゃったっ!
落ちて来たリュックに気を取られて…っ 

持っていたノートが階段の踊り場に散らばっていった。

『大丈夫か!?奈絵!』

わーーっ、全然大丈夫じゃない~~~!
大変なことになってる、半分くらい落ちちゃったかもどーしよ!?

急いで階段を駆け下りてしゃがみ込んだ。ぐちゃぐちゃに散らばったノートをかき集めて必死に拾い集めた。

『気を付けろよ!』

気を付けてたつもりだもん!

『危ないだろ!』

だから気を付けてたの!

『ケガしたらどーすんだ!?』

だから…っ

『奈絵に何もなくてよかった』

「……。」

次から次へと口うるさく頭の中を響かせるその声はほっとしてた。
表情は見えないのに安心するみたいに聞こえた。

『早く拾えよ、奈絵はどんくさいな』

「…。」

最後の一言は余計だけど。

言われなくても拾うし、私がやったんだからちゃんと片付けるもん。

階段の上から落としたノートは踊り場中に散らばっていて、早くどうにかしないとってあわててた。
帰りこの時間はここの階段はよく使われるから誰かが来る前にどうにしないとって。

だから散らばった踊り場しか見てなくて。

急いで拾おうと隅っこにまで飛んでいったノートに手を伸ばし…っ


「はい」


だけど私の手がノートに届く前に、スッと伸びて来た手がノートを拾ったから。


え、誰…?


ゆっくり顔を上げる、その手をたどって前を向くように。

「大丈夫?」

私の前にしゃがみ込む男の子、この人は…