桜の咲くころ、思い出して

『でもこないだのメンテナンスも異常なかったけどな』

「それは…っ、そうだけど…」

何も、認められなかったおかしなところは。
それどころか最近調子よさそうだねって病院の先生に言われちゃったりして。


じゃあ何が問題なの?

どこにも異常がないのに、何かが変なの…


それはどうして?


『伊田と付き合うことになったんだろ?』

ボンッとお湯が沸いたように顔が熱くなった。

このタイミングでそんなこと言う!?

しかもヨシノから言われるなんて、もちろんヨシノのことだから知ってるし聞いてたしわかってると思うんだけど今そんなこと…っ

『わっ、奈絵が超顔赤くしてる!初めて見る顔してる!』

「!」

私の姿が見えないヨシノが唯一見える方法は鏡、洗面台の前に立ってたから鏡に映った私の顔を見てヨシノが笑った。しかもキャッキャ、声を上げて楽しんで。

あわててサッとしゃがみ込んで鏡に映らないように隠れた。

恥ずかしいなぁ、もう!

『なんだよ~、隠れるなよ!せっかく貴重なもん見れたのに~』

「…っ」

隠れるよ、茹でダコみたいな顔見せれるわけない!
自分でもすごい顔してたなってびっくりしたし!

絶対いろいろ言われる、ヨシノだもん絶対何かっ


『よかったな、奈絵』


それは1番意外な言葉だった。

言葉をよく知ってるヨシノだから、難しい言葉で言い立てられるんだって思ってたのに。

『そっかー、ついに奈絵にもそんな奴が出来たか~!』

「…もっと冷やかして来るかと思った、初めてとか言うから」

ここぞとばかりに茶化して笑ってくるかなって、一言も二言も多いヨシノだもん。

『そんなこと言うかよ、初めてだから嬉しいんだよ』

「……。」

『奈絵がそんな顔する相手、初めてだろ?』

「…。」

そっか、そうだね…
ヨシノはこんな時そう言ってくれるよね。

私が間違ってた、ヨシノはいつだって私の味方だもんね。

『奈絵にも大切な人が出来たんだな』