桜の咲くころ、思い出して

ふるえる手をゆっくり伸ばして伊田くんの背中に回した。

ぎこちなくておかしかったかもしれないけど…


だけどきっと伊田くんは気づいてる、私のドキドキした心臓の音に。


「うれっ、うれしかったから本当は私も…っ」

ドキドキが止まらなくなるの。

声はうわずっちゃうし手はおぼつかないし、わーって頭が真っ白になるみたいにいっぱいいっぱいだけど…

伊田くんの声だけはスーッと私の中に入って来て。

「川瀬ちゃんのこと好きだから」

「…っ」

「川瀬ちゃんのことが好き」


誰かを好きになるなんて思わなかった。

誰かに好きって言われる日が来るなんて思わなかった。

諦めることも思いつかないぐらい、私には関係のないことだと思ってたから。


だけど、変えてくれたの。

私の中で変わったんだよ。



私の世界は伊田くんと出会って変わったの。



「川瀬ちゃん」

「はい…」

静かに伊田くんが離れた。

肩から腕、そぉーっと下におろして手を握る。

優しくてあったかい、伊田くんの手が指先を絡んで。


「俺と付き合ってよ」


知らない世界に飛び込むのは少し勇気の入ることだったけど…

「はい…っ」


伊田くんだから、伊田くんと恋がしたいってあの日のキスに想いをこめたの。