桜の咲くころ、思い出して

知らない世界に飛び込むことは勇気が入って、少しだけ不安になっちゃう。

だってね、自分の気持ちを言葉にするだけで涙が出そうになるの。


どうしてかな?

かなしいわけでもないのに…


あ、そっか。

これがそうゆうことなんだ。


わからないから教えてくれてるんだ、ドキドキする胸の音が教えてくれてる…



その答えを、私が言わなきゃいけないことを。



“俺、川瀬ちゃんのこと好き”

その返事を、今なら…



「私、伊田くんのことが好きです…っ」



初めて人を好きになったから。


「好き、…です」


さっきよりもドキドキと鳴る心臓が苦しくて、気付けば涙まであふれちゃってた。

スカートの裾をさらにぎゅーっと握って下を向いた。

なんで泣いてんの?
恥ずかしい、こんな時まで私は…っ


「!」


下を向いてたから気付かなかった、目も閉じちゃって見えてなかった。

伊田くんの手が私の背中に触れて抱きしめられたこと。

「俺の勘違いかと思ったし」

伊田くんに包まれる、耳元で伊田くんの声がする。

一気に上がりすぎた体温は追いつかなくてショート寸前だ。

「川瀬ちゃん誰ともしゃべらないって言うわりに俺とはしゃべってくれるし笑ってくれるしいい感じなのかもとか勝手に思って、そしたらちょっと調子乗っちゃって」

伊田くんが話すたび息が耳にかかる。伊田くんの息が熱い。

「昨日の…あれは、雰囲気に流されてさすがに適当過ぎたかもって反省したし」

「…。」

「…ごめん」

「う、うん…」

こんな時どうすればいいのか、それはやっぱりわからなくてただ抱きしめられたままその場に立ってた。

すとんっと下にしたままの行き場の迷う手をどうしたらいいか…


だってね、私の方だから。

勘違いしたのは私の方、伊田くんといるとドキドキして伊田くんといると世界が変わったように思えてキラキラ輝いて見えるの。



勘違いしちゃってたんだよ、私も。



「あっ、謝らないで!」